国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所のウェブサイトは2013年9月に移転しました。

新ウェブサイトはこちらからご覧いただけます。


アジア太平洋地域

【アジア太平洋地域の事例】
1.東ティモール:選挙サイクル支援プログラム
2.ブータン:コミュニティ開発と地方行政能力強化
3.モンゴル:零細・中小企業支援プロジェクト
4.パキスタン:洪水被害に対処する地方再生復興支援局のスタッフ
5.カンボジア:HIVポジティブの女性たちの起業を通じたエンパワーメント
6.アフガニスタン:非合法武装集団の解体プログラム(DIAGプログラム)
7.マレーシア:平和維持活動研修の能力強化支援
8.ミャンマー:デルタ地域の貯水施設改修工事

1.東ティモール:選挙サイクル支援プログラム

© Martine Perret/UNMIT

2007年に実施された一連の選挙(2回の大統領選挙と議会選挙)は、東ティモール政府が2002年の独立後、はじめて自ら実施した国政選挙プロセスでした。これはまた、2006年の軍・警察間の衝突が引金となった国内暴動と政治危機直後の重大な選挙でもありました。この大事業を控えた2007年2月、日本政府はUNDPの「東ティモール選挙サイクル支援プログラム(STEC)」を通じ、緊急無償資金協力として72万3,855米ドルを拠出し、自由で公正な選挙の実現を支援しました。

日本の他、欧州連合(EU)や国連民主主義基金(UNDEF)を含む9か国・基金の支援により実施した同プログラムにおいて、UNDPは、東ティモール選挙管理技術事務局(STAE)、国家選挙管理委員会(CNE)等のパートナーをサポートし、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)との連携のもと、選挙啓蒙活動および有権者登録、メディア支援や国際/国内選挙監視員の調整活動を行いました。大統領選挙は4月9日に第1回目が、5月9日には上位候補者2人による決選投票が滞りなく行われ、ジョゼ=ラモス・ホルタ氏が第二代大統領に選出されました。続く6月30日に実施された議会選挙では、最終的な有権者登録数は約53万人に達し、投票率は81%を記録しました。この結果グスマン首相率いる連立政権が成立し、現在に至っています。


2.ブータン:コミュニティ開発と地方行政能力強化

© UNDP Bhutan


© UNDP Bhutan

後発開発途上国の一つのブータンでは、人口の約23%が貧困ライン以下の水準で生活をしており、うち98%が地方に住んでいます。UNDPは、2008年6月から日本UNDPパートナーシップ基金により、国民総幸福(GNH)委員会にある地方開発部(LDD)と現地NGOのタラヤナ財団と連携して、「貧困削減のためのコミュニティ開発と地方政府能力強化」プロジェクトを実施してきました。LDDは、デンマーク、JICA等からの支援も受け、地方公務員を対象として計画策定、ニーズ評価、予算編成等における能力研修を、タラヤナ財団は、最も貧困とされている市区町村の一つであり、舗装された道路までのアクセスが歩いて3日以上の遠隔地の山間地域の村々で生活する52世帯を対象として、よりよい生計が営めるために、参加型手法を用いた村人たちの組織化や有機農業、基礎的な建築、工芸等における技能研修を実施しています。

活動に際し、コミュニティからボランティアを募り、自助努力を促すとともに、技能研修、マイクロ・クレジット、よりよいマーケットアクセスを提供することによって現金収入や生活向上を達成できるようキャパシティ向上を図ることや、コミュニティ・センターの運営管理においても村人のオーナーシップを徐々に持たせる事により、持続性をより確かなものにしたこのモデルは、成功モデルとして国内の他の地域やプロジェクトにおいて活用されています。村人は自分たちの手で建てられた家を持つことができ、生活基盤が向上したことにより、自信が高まり、集団活動に積極的になっています。現在ブータンが推し進めている地方分権体制において、山間地域の農村で生活する人々が、行政側に対しニーズを明確に表現できることによって、より効率的で透明性の高い地方行政が実施されるとともに、ブータン政府の現5か年計画の主要開発目標である貧困削減という目標への実現をより可能にすることが期待されています。


3.モンゴル:零細・中小企業支援プロジェクト

© UNDP Mongolia

日本政府の資金提供を受けて、UNDPは2005年にモンゴル政府の掲げる貧困削減政策を支援する「モンゴル零細・中小企業支援プロジェクト(EMP)」を開始しました。現在はフェーズ2を2009年から2012年までの予定で実施中です。EMPの特徴は、ブランド化を通して地方産品の競争力を向上させる「一村一品運動」の構想を取り入れたことです。1980年に日本の大分県で開始された一村一品運動は、これまでにアジアとアフリカを中心に多くの開発途上国に広まっています。

UNDPは零細事業者や中小企業経営者を集めて組織化し、技術支援、コンサルティング・サービス、マイクロ・ファイナンスの機会を提供してきました。EMPフェーズ1,2を通して事業立ち上げ・拡大の支援を受けた人は約1400人に上り、400の新規雇用が創出され、民間金融機関から事業資金の融資を初めて受けた人は約100人に上ります。プロジェクト受益者の年間世帯収入は平均して、実施前から30%以上も増加しています。雇用創出や所得向上を通して、EMPがモンゴルの貧困削減に寄与することが期待されます。


4.パキスタン:洪水被害に対処する地方再生復興支援局のスタッフ

© UNDP Pakistan

日本政府の資金拠出により2010年初頭から実施中の「北西辺境州における平和構築及び経済復興を通した持続可能な開発計画」では、UNDPは、地方災害管理局(PDMA)の管理下に2009年第三四半期に設置されたばかりの地方再生復興支援局(PaRRSA)のスタッフ雇用及び育成、設備導入、地域産業活性化、村落開発、スポーツを含む青少年活動等に対する支援を行ってきました。2010年7月末に今世紀最悪と言われる洪水が発生した際には、UNDPのプロジェクトによって雇用されたPaRRSAスタッフが迅速に対応しました。途方もない災害を目の前にして、PaRRSAペシャワール事務所のスタッフはそれから3週間、新しくできたオフィスに泊まり込みとなりました。軍隊・地方行政府・水利局・法執行機関との連携のための24時間体制の緊急管制室がPDMA内に設置されました。PaRRSAスタッフは、水位を増す洪水から人々を安全に避難させるだけでなく、救援物資を迅速に届けるために活躍しました。現在PaRRSAスタッフは洪水対策、支援物資供給、被災地救済及び復興支援の専門家としても活動できるよう能力の強化に努めながら、地域の再生復興に取り組んでいます。


5.カンボジア:HIVポジティブの女性たちの起業を通じたエンパワーメント

© UNDP Asia Pacific Regional Centre

自分自身や夫がHIVに感染している女性たちが生計手段を確保することは、偏見や差別のため、また多くの場合、仕事の経験や技術を持たないため、極度に困難であると言えます。この問題に対応することを目的として、日本政府からの資金提供を受けたUNDPはプノンペンのドレス縫製工場(MDSF)を支援するプロジェクトを実施しています。このプロジェクトの特徴は、MDSFがHIVに感染しているカンボジア人女性の手で運営されていること、雇用機会の他にも偏見、差別、失業を心配せずに生活や健康について気軽に話し合える環境を提供していることです。

MDSFは持続可能な社会事業として、HIVに感染している多くの女性に職業機会を提供するという明確な目標を掲げ、製品の品質向上とブランド化、有名デザイナーや有名モデルとの契約にも成功しました。MDSF製品は「Women Empowered」の略である「WE」というブランド名で日本、イギリス、カナダ等に輸出・販売されるようになりました。2007年には紺野美沙子親善大使が本工場を訪問しています。MDSFはHIVに感染した女性が社会で生産的な役割を担えることを証明し、世界中で苦しんでいるHIVポジティブの女性に対し希望を与えるものとなるでしょう。


6.アフガニスタン:非合法武装集団の解体プログラム(DIAGプログラム)

© UNDP Afghanistan


© UNDP Afghanistan

モハマドさんは以前100人のムジャヒディンを統率する司令官を務めていました。「昔は武装集団の司令官として、部下たちと共に村の外で暮らしていました。家族と平和に過ごせたことは一日としてありませんでした。」しかし2009年に全てが変わりました。UNDPによるDIAGプログラムのことを耳にして、モハマドさんの武装集団は武器を放棄して解体することを選択したのです。「このプログラムのおかげで、私は平和に暮らせる毎日を手に入れることができたのです」とモハマドさんは述べています。DIAGプログラムでは、必要条件を満たせば選挙に出ることも政府の仕事を得ることも可能です。モハマドさんはアブカマリ区知事に選ばれました。

UNDPはアフガニスタン政府の平和復興活動を支援するため、2005年にDIAGプログラムを開始しました。アフガニスタン全土でUNDPによる解体式典が開かれ、これまでに742の非合法武装集団が武器を放棄しました。DIAGプログラムの資金は、UNDPのアフガニスタン活動の主要ドナーである日本政府によって2006年から提供されてきました。日本政府の拠出は1920万ドルに及びます。武器を放棄して次世代のために国を復興する手助けをしようと、モハマドさんは多くの人々に呼びかけています。そして、全ての子どもが学校で学べるようになることを強く願いながら、「私たちの暮らしを良くできるのは教育なのです」と述べています。


7.マレーシア:平和維持活動研修の能力強化支援

© UNDP Malaysia

UNDPは日本政府とマレーシア政府から資金提供を受け、「マレーシアが実施する平和維持活動訓練の能力強化支援プロジェクト」をマレーシア防衛省と共同で運営しています。民軍連携やジェンダーなど今日の平和維持活動が考慮すべき複雑な問題に対応できるようになることを目的に、アジアとアフリカからの平和維持活動家が訓練に参加しています。

1960年にマレーシアはコンゴ共和国で初めて平和維持活動を行って以来、これまでに23800人の軍人と1000人の文民警察官を20以上の国々の国連平和維持活動に派遣した実績を持ちます。今回のプロジェクトで東南アジアにおける平和維持活動の訓練拠点がマレーシアに誕生しました。マレーシアは南南協力に対する積極的な姿勢を打ち出しており、平和維持活動の豊富な経験と専門知識がアジアとアフリカの国々にも共有されることが期待されています。


8.ミャンマー:デルタ地域の貯水施設改修工事

© UNDP Myanmar

2008年5月、ミャンマーを襲ったサイクロンによって海水が村々の貯水池に入り込んだため、デルタ地域の村の人々は飲料水を別の地域から調達することを余儀なくされました。しかしUNDPミャンマー事務所の支援を受け、デルタ地域の村々は復興しつつあります。UNDPは日本政府と欧州委員会の資金提供を受けて、デルタ地域の村々の水と公衆衛生の設備を改善する支援を行っています。支援活動を効率的に進めるため、UNDPは技術支援を担当するとともに、水・公衆衛生委員会および地域開発委員会(CDC)を設立しました。

CDCの責任者は「貯水池改修の間、私たちはUNDPが提供してくれた実地訓練を受けることができ、村の人々は貯水池の清掃を通して収入を得ることができました」と語っています。これまでに175 の貯水池改修、194の雨水タンク、7657のろ過設備が提供されており、デルタ地域で生活する人々は乾季でも水不足をほとんど心配することなく生活できるようになりました。


<UNDPと日本へ>