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ジェンダーと開発

UNDP / 日本WID基金  
 
 

なぜ、開発支援にジェンダー平等と女性のエンパワーメントが重要なのでしょうか−それは、ジェンダー平等が根源的・普遍的な価値であると同時に、「女性差別撤廃条約」「北京宣言及び行動綱領」「国連ミレニアム宣言」「ミレニアム開発目標(MDGs)」など、日本を含む国際社会が公約した国際約束だからです。さらに、すべての開発支援活動にジェンダーの視点を主流化し、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントを促進することで、支援の効率と効果を上げることができるからです。

社会・経済構造、法制度、教育、家庭内など、社会のあらゆる面で、性別に起因する差別や不平等、固定的な役割分担が存在します。このように社会的・文化的に規定された男性と女性の概念をジェンダーと言います。このようなジェンダーに起因する格差や不平等に注意を払わないと、開発支援は男性と女性で異なる結果をもたらすことになり、さらには既存の不平等を拡大しかねません。したがって、ジェンダーによる格差や不平等を見極めながら支援を計画し、実施することが重要なのです。

現在、世界の貧困人口の6割、非識字人口の3分の2が女性と言われるとおり(注)、女性は社会的・経済的に男性よりも過酷な状況に置かれています。しかし、女性は、様々な経済活動に従事しているだけでなく、家庭やコミュニティにおける無償のケア労働を通じて、社会・経済基盤を支え、次世代を育んでいます。つまり、開発の受益者であると同時に、「開発の主体的な担い手」でもあるのです。

女性や女児のニーズにしっかりと応え、投資することは、開発効果の向上と公平性の確保につながります。「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」は、国の公正な成長を促し、国際社会が一丸となって取り組んでいるグローバルな目標であるミレニアム開発目標を確実に達成する鍵であり、持続可能な人間開発を可能とするのです。

(注) Gender Equality Strategy 2008-2011 (UNDP), 世界子供白書2007 女性と子供 ジェンダーの平等がもたらす二重の恩恵(UNICEF)

 
 
 

UNDPにおけるジェンダーの位置づけ

UNDP / 日本WID基金  
 
 

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成し、持続可能な人間開発を実現するための絶対的要素です。UNDPは、2008年から2011年の間に組織が一丸となって取り組む戦略としてGender Equality Strategy(GES: ジェンダー平等支援戦略)を策定しました(注)。UNDPの4つの重点活動分野(貧困削減、民主的ガバナンス、危機予防と復興、エネルギーと持続可能な環境)全般にわたり、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに資する具体的取組みを設定しています。また、GESは、ジェンダーに基づく暴力(女性や女児に対する暴力)を持続的な人間開発とMDGsの達成を阻む大きな障壁と捉え、特別な対応の必要性を表明しています。

Gender Equality Strategy
2008-2011

GESにもとづき、UNDPは2008年から2011年の間に以下の活動を行います:

  • 途上国の機関(中央政府・地方自治体を含む)が貧しい女性と男性、女児と男児のニーズに公正に対応するような政策、行動計画、予算配分をするための支援
  • 中央政府、地方自治体、民間セクター、市民社会における女性の参加と意思決定過程への参画の促進。
  • 政府や女性団体による情報やデータの収集・分析・活用能力の強化。政策立案の裏付けとなるジェンダー平等や女性のエンパワーメントに関する情報や統計の確保。

さらに、4つの重点活動分野における具体的取組みは以下のとおりです:

貧困削減とMDGsの達成
  • 貧しい女性と男性のニーズに対応した国家開発戦略、行動計画及び予算を策定すると共に、女性がこれらの政策形成過程により積極的に参加し、女性の「声」を反映することができるよう支援します。
  • 女性の起業活動への投資など、女性や女児の経済的権利と機会の拡大を促進します。
  • 法律、政策、予算配分を通して、HIV/エイズのジェンダー的側面に取り組むための能力向上を図ります。
  • 国家の統計担当部局がジェンダー統計を作成・活用するための能力を強化します。
民主的ガバナンス
  • 選挙プロセスの改革支援を通して官公庁で働く女性、及び国家の管理部門に従事する女性を増やし、意思決定プロセスにおける女性のリーダーシップを高めるための支援を行います。また、政党や行政の能力強化を図り、女性政府関係者や一般女性にとってそれらがより身近でアカウンタビリティーを備えたものになるよう支援します。
  • 貧しい女性と男性に平等な法的保護を確保するための司法改革を促進します。
  • 貧しい女性と男性が平等に公的サービスの恩恵を受けることができるよう、とりわけ地方レベルでの行政能力の強化を支援します。
  • 各国が国連女性差別撤廃条約(CEDAW)を批准し、実施し、進捗状況を報告するための支援を行います。
  • 地域・中央・地方政府、公共機関、市民社会組織と協力してジェンダーに基づく暴力の防止に取り組みます。
危機予防と復興
  • 紛争時における女性の安全の強化:女性への暴力を防止します。
  • 女性のために法の正義と安全を提供します。
  • 女性の市民権、参画及びリーダーシップの拡大:意思決定者としての女性の役割を拡大します。
  • 女性と共に、そして女性のための平和構築:すべての平和構築プロセスに女性の参加を促します。
  • 災害危機削減におけるジェンダー平等の促進:女性が持っている知識や経験を活用します。
  • ジェンダーに対応した復興の実現:女性と男性がより良く生活を再構築できるように支援します。
  • 女性のニーズに対応できるよう政府のジェンダー主流化:国家のアジェンダ(政策議題)に女性の抱える問題を反映させます。
  • 社会変革のための能力強化:協力して社会を変革します。
環境と持続的開発
  • 環境・エネルギーに関する政策・行動計画・予算配分に男女のそれぞれのニーズが確実に反映されるよう政府を支援します。
  • エネルギー・環境サービスが貧しい女性と男性に平等に提供されるよう政府の能力を強化します。
  • 気候変動の緩和・適応に関する決定を含め、国家・地域・グローバルレベルでの環境に関する意思決定過程に、女性のネットワークが効果的に参画できるよう支援します。
  • 女性起業家や地域密着型女性組織による環境金融へのアクセスを改善します。
  • 生物多様性や天然資源の保護、維持、管理に関して、地元の女性たちが既に持っている知識を収集し、活用します。

(注) GES策定にあたっては、外部有識者によるGender Equality Strategy 委員会が設置され、UNDPの活動地域・分野における専門家の知見を得ました。座長は、目黒依子上智大学総合人間科学部教授が務められました。