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イベント:
早稲田大学アフリカ研究所主催シニアレベル国際会議「気候変動と資源稀少化時代における日本のアフリカ政策〜アフリカの人びとの主導による持続可能な開発を目指して〜」

日時:2008年2月21日(木) 10:00-18:00
場所:早稲田大学国際会議場3回 第一会議室/第二会議室
主催:早稲田大学アフリカ研究所
共催:特定非営利活動法人 TICAD市民社会フォーラム(TCSF)、国連開発計画(UNDP)

概要:

 本会議は、「気候変動」と「資源稀少化」といった最近の変化がアフリカの人間開発とミレニアム開発目標(MDGs)達成への影響に関する知見を共有し、TICAD IVおよび北海道洞爺湖サミットに向けて、日本政府に対する政策提言を行うことを目的に開催されました。国内外の研究機関、NGO、国際機関などから有識者や専門家が参加し、開発政策という観点から気候変動の影響を議論しました。
 UNDPからは、人間開発報告書室(HDRO)のポリシー・スペシャリストで、『人間開発報告書2007/2008気候変動との闘い--分断された世界で試される人類の団結』の共同執筆者でもあるアミー・ゲイ氏が出席しました。ゲイ氏は全体会議において『気候変動とアフリカの貧困者』と題して問題提起を行い、平均を上回る速度で温暖化が進行するサブサハラ・アフリカでは、旱魃の頻発と降雨パターンの変化により、生活の営みを雨水に依存する貧困層がさらに困難な状況に追いやられると指摘しました。同地域では、2000年から2004年の間に1,000万人が旱魃に見舞われた一方、200万人が洪水の被害を受けています。サブサハラの乾燥地帯における農業では2060年までに25%、260億ドル相当の損失が見込まれる一方、人口の集中する沿海部では、今後100年間で15-95cmと想定される海面水位の上昇により、インフラ設備の30%が海没または沿岸侵食に晒される危険性があります。ゲイ氏はさらに、気候変動が初等教育普及率、保健衛生状態やジェンダー格差を悪化させ、アフリカにおける人間開発とMDGs達成に向けた進捗に深刻な影響を及ぼす恐れがあると警告しました。
 気候変動が人々に及ぼす影響に対処すべく、温室効果ガスによる気温上昇率を抑制するための緩和策(mitigation)と、気候変動による急激な生活条件の変化に備える適応策(adaptation)の早急な実施が必要とされています。ゲイ氏は、気候変動は科学、経済のみならず社会正義と人権にもかかわる重大な問題であるとして、環境への配慮を開発政策の中心に据えるよう訴えました。具体策としては、旱魃地域における雇用保証プログラム、貧困者自身によるリスク対処努力を支援するためのさまざまな方策、気象観測ネットワークの整備等が挙げられる一方、緩和支援策としては、「共通だが差異のある責任」の原則に則りつつ、途上国において薪からそのほかの再生可能資源への一次エネルギー転換や、クリーン・エネルギー技術の移転を促進する必要性を指摘しました。
 最後にゲイ氏はTICADに対する期待として、環境問題への対処の支持と適応に向けた取り組みのへの支援を要請するとともに、先進国に対しては、温室効果ガスの排出量を2002年までに30%、2050年までに80%削減すること、国民総生産(GNP)に占めるODAの割合を0.7%まで引き上げるというコミットメントを順守し、さらに気候変動のための追加資金を提供することの必要性を強調しました。
 本会議の最後に共同採択された提言は、気候変動への対応における「人びと主導型」アプローチの重要性とすべてのステークホルダーの参加の必要性を強く提唱しました。また、TICAD IVおよび北海道洞爺湖サミットでは、日本政府がリーダーシップを発揮し、気候変動と資源開発の問題をMDGsと結び付けた議論を行うよう求めました。

参考資料: