国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所のウェブサイトは2013年9月に移転しました。

新ウェブサイトはこちらからご覧いただけます。


 

世界中での活動実績

UNDP / 日本WID基金  
 
 

ミレニアム開発目標達成と貧困削減MDGsに関してはここをクリックしてください

国別

ガーナ
北部ガーナにおけるシアバター産業支援を通じた現地女性のエンパワーメントと貧困削減 (承認額:$245,927)
ガーナ:シアバターを生産するガーナ女性(写真提供:千葉康由氏)

近年、ガーナは目覚しい経済成長を遂げています。しかし、降雨量が少なく土壌がやせている北部地域では、主産業の農業が不安定なので人々は厳しい生活環境にあります。この地域の女性にとって、シアバターの生産は伝統的かつ貴重な収入源ですが、シアバター生産の技術や市場価格について特別な知識を持ち合わせておらず、収入は不安定でした。そこで、女性の経済的・社会的エンパワーメント、貧困家庭の生活水準の向上、さらにはシアバターの産業育成による北部地域の貧困削減を目的とし、2007年2月に当プロジェクトが立ち上がりました。

実施にあたっては、JETRO、(株)生活の木、およびJICAをはじめとする日本の関係諸機関と綿密に協力しながら、 北部地域のサナリグ地区とワレワレ地区を中心に、品質を向上させるための生産過程の改善やインフラ整備、生産技術・小規模ビジネス・スキルの指導、国内外のシアバター製品のマーケット開拓、また、ビジネスを運営するために必要な識字・数字教育など包括的かつ戦略的な支援を行っています。JICAとの連携により、生産・品質を均一にし、持続的に作業を進めるための生産マニュアルも作成されました。このプロジェクトは、日本の民間企業および援助機関と協力して女性のエンパワーメントと地域の産業育成に貢献したという点で、パートナーシップ・プロジェクトの優良事例でもあります。

ガーナ:生産女性を対称にしたシアバター生産に関するトレーニングワークショップ
  • トレーニング: 女性の生産指導者として育成し、シアバター生産センターに配置することで、大勢の女性たちへの技術指導を可能にしました。また、コスト、値段の設定、交渉技術や顧客とのやり取りを含む、小規模ビジネスのための経営学トレーニングや、識字や算数のクラスを開催しました。
  • インフラ整備: 常に質の高いシアバターを生産できるように、生産センターには貯水槽、発電機、女性専用トイレを設置しました。
  • 女性生産者連合の設立: 女性生産者による初の連合、Pagsung Shea Butter Producers and Shea Nut Pickers Associationが設立されました。

そのほか、2008年の世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)では、福田首相(当時)が日本の国際協力の好事例として、ガーナのシアバター・プロジェクトを紹介しました。さらには、同年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議 (TICAD IV)では、ガーナから招聘された現地の女性たちが、シアバターの生産過程のデモンストレーションを行い、多くの人々やメディアの関心を集めました。

* 当プロジェクトの成果を受け、日本政府は草の根人間の安全保障基金無償を通して、シアバター生産センターの建設と既存の施設を拡大するための追加資金を拠出。「倉庫及び生産能力の向上を通してガーナ北部のシアバター製品の質の向上を図る」と題したプロジェクトで、引き続きシアバター生産と産業育成の活動を支援しています。

インド
ICTを通じたインフォーマル・セクターの女性零細起業家のキャパシティ・ビルディング(承認額:$315,000)
インド:「ICTを通じたインフォーマル・セクターの女性零細企業化のキャパシティ・ビルディング」プロジェクトより

貧困女性の多くは、収入を得て家計を支えるという重要な役割を果たしています。しかし、主に不安定で条件の悪いインフォーマル・セクターで就業しているというのが現状です。このプロジェクトでは、インフォーマル・セクターに従事する自営女性の相互扶助組織SEWA(自営女性労働者協会)とパートナーシップを組み、ICTを利用して零細事業を営む女性の生活向上と経済的エンパワーメントや能力育成を図りました。またSEWAのマイクロ・クレジット(小口貸付)事業の効率向上にも貢献しました。

実施にあたっては、まずITトレーニングのためのコミュニティ・ラーニングセンター(CLC)を設立しました。そして、自営女性の加工食品や工芸品等の生産管理とSEWAのマイクロ・クレジット事業の効率を向上させるためのソフトウェア、零細企業や生産過程をより効率的に管理するためのIT研修プログラムを開発し、それらを活用して女性たちにトレーニングを行っています。トレーニングを修了した女性たちが、今度はインストラクターとして地元地域の女性を育成する、という知識・技術の循環を生み出し、女性たちが自らの力でコミュニティの能力向上を担うことで、貧困脱却を促進しています。また、SEWA本部と各地に点在するSEWA組合員女性とのコミュニケーションを円滑にするために、組織内部のオンライン・コミュニケーション・システムも設置しました。

  • コミュニティ・ラーニング・センター(CLC)の設立: IT技術トレーニングなどを行うために、9つの地域に21のCLCを設立しました。また、SEWA本部にオンラインの組織内コミュニケーションシステムを設置し、センター間や組合員同士のコミュニケーションを円滑にし、CLCの運営や活動を一括して管理できる環境を整えました。また、ビデオ会議やデータの共有を円滑に行うために必要となるLANやWANも導入しました。CLCは、正規の教育や生計手段にアクセスのない農村地域の女性・子どもたちに様々なトレーニングを提供し、貧困から脱却するための支援をしています。また、CLCは、トレーニングやコミュニティ開発プログラムの実施、開発に関する情報提供を通じて、コミュニティのハブ(センター)となっています。トレーニングを受けた女性たちは、インストラクターとして地域の女性たちの指導にあたり、知識と技術を率先してコミュニティに還元しています。
  • インド:コミュニティ・ラーニングセンター(CLC)で
    IT技術のトレーニングを受ける女性たち
  • ITトレーニング: IT技術習得のためのコースや、ITを利用してリーダーシップなどの多様なスキルを学ぶコースなど、トレーニングの場を設けました。これまでに、34,000人もの女性がIT技術トレーニングを受講しています(内、8,000人はITの基礎知識・技術コース、1,000人はITインストラクターの養成コース、25,000人は草の根リーダーの養成コースを受講)。また、零細事業を行うグループのためのリーダーシップ・トレーニングも開催しました。そのほか、CLCでは、各種ITツールの操作法(ファックス、携帯電話、ビデオ機器)、電話の修理方法、ビジネスに必要な算数、ミルク・脂肪分テスト機械の使用方法、工業塩製造方法などのトレーニングが行われました。
  • 各種ツールの開発: 零細事業のマネージメントや生産管理にITを活用するためのトレーニング・プログラム、マルチ・メディアやグラフィック・ソフトウェアを活用したトレーニング・モジュール、マイクロクレジット・システムの管理ソフトなどを開発しました。生産管理とマイクロ・クレジット事業のためのソフトウェアは、インド国内外の様々な組織で応用可能なので、高い波及効果をあげています。

*開発と女性のエンパワーメントにICTを活用した当プロジェクトの手法・ノウハウ・経験は、UNDP以外の開発機関、また州政府とも共有されています。

チリ
雇用創出と労働市場におけるジェンダーの平等化(承認額:$100,000)

UNDPとILOが共同で行った「ジェンダー、貧困、及び雇用に関する共同プログラム」の中で、特にチリに特化した取り組みをWID基金で支援しました。労働市場や雇用分野におけるジェンダーに配慮した政策実施のモデル構築及び啓発活動の推進を目的としたものです。実施にあたっては、まず、ジェンダーに配慮した政策策定に必要な情報を得るために、チリの社会保護に関するソリダリオ・システム、労働市場、および労働環境におけるジェンダー格差の現状を調査しました。そして、調査の分析結果に基づいて、労働組合、雇用・労働問題に携わる政策立案者、政府の雇用促進プログラム担当者、そしてNGOを対象としたワークショップを開催し、ジェンダー主流化のための能力構築や意識啓発を行いました。また、ジェンダーに配慮した貧困削減及び雇用対策プログラムを形成するための能力向上や、政策実施のモデルを構築しました。

モンゴル
ジェンダー予算立案のためのキャパシティ・ビルディング (承認額:$126,000)
モンゴル:「ジェンダー予算立案のためのキャパシティ・ビルディング」プロジェクトより

当プロジェクトは、国家及び地方レベルでジェンダー予算を推進するための能力および制度の向上を目的として、財務・経済省とのパートナーシップにより、政府内にジェンダーの視点から国家予算・地方予算の配分をモニタリング(監視)するための能力開発と制度の構築を進めました。

実施に当たっては、ジェンダー予算に対する理解を深めることを目的に、国内5地域で中央及び地方政府や市民社会組織の啓発のための研修や、地方自治体や研究機関を対象に財政の地方分権化プロセスにジェンダーの視点を主流化するためのキャパシティ・ビルディングを行いました。また、財務省や経済・貧困調査グループなど、主要な国内政策担当者を対象としたジェンダーの観点からの予算分析支援や、全国男女平等委員会やNGOを対象としたジェンダーの観点からの政府予算編成過程のモニタリング支援も行いました。結果として、モンゴルの保健分野の国家予算には、ジェンダーの視点が取り入れられるようになりました。また、現在同国が行っているMDGsコスティング(注2)には、当プロジェクトのノウハウが活かされています。

  • 当プロジェクトでは、「ドナーからの支援」「雇用」「社会保障及び福祉」の3分野についてジェンダーの観点から分析した調査報告書、及びジェンダー予算のトレーニング・マニュアルが作成されました。
  • 研究レポート「Gender Analysis of Public Budget in the Employment Sector」(2004年:英語、モンゴル語)
  • 調査レポート「Gender Analysis of Donor Aid and Loans in the Employment and Social Security Sectors」(2004年:英語、モンゴル語)

(注2) 現在のMDGsのための資金が、2015年までに達成を可能とするような資金分配になっているかを分析し、それを基に、2015年の期限までにMDGs達成を実現するために必要となる追加資金を査定し、ドナー間でそれをどのように配分するか、また、どの国にどれだけの資金が必要であるかなどを図ること。

中国
WTO加盟: 女性のチャレンジ(承認額:$315,000)

当プロジェクトでは、WTO加盟を契機に進展する貿易の自由化が、農業と工業に従事する貧困女性の雇用形態や労働及び生活環境にどのような影響を及ぼすのか、「ジェンダーの視点」から調査・分析をしました。

実施にあたっては、中国国内の研究者や経済学者から成る中国の研究チームが、UNDP、UNIFEM、国際労働機関(ILO)等の支援を受け、ジェンダー分析に関する知識と手法を身につけ、マクロ経済を「貧困層の女性労働者の視点」という今までとは違った角度から捉え、調査しました。また、包括的な分析報告書を作成し、具体的な政策提言を行いました。このプロセスは、中国政府の研究機関の能力構築にも大きく貢献しました。報告書の発表は国際的に注目を集めたばかりではなく、貧困女性の雇用状況についての追跡調査を行うための重要なベースライン・データ(注3)となっています。

(注3) 将来にわたって状況の変化を測っていく際に、対比すべきものとして現状の平均値や傾向を表現するデータのこと。

ウクライナ
ICTと女性農民 (承認額:$190,800)
ウクライナ:「ICTと女性農民」プロジェクトより

農業大国でのウクライナでは、農民人口の大半が女性です。当プロジェクトでは、情報通信技術(ICT)を利用し、ウクライナ女性農民評議会の組織力及びネットワーキングを強化して、女性農民の起業・農場経営能力の構築を支援しました。

実施にあたっては、まず、インターネットへのアクセスを備えたITセンターを設立し、女性農民たちが知っておくべき農作物や農業技術に関する知識や市場に関する最新の情報を集めたオンラインの情報源を構築・提供しました。さらに、農地改革によって改正された土地所有権や税金などに関する法律・行政プロセスについても情報提供を行いました。新しい知識と情報を得て自己の能力を強化したこと、また組織的な力をつけたことで、女性農民たちは、政治や法律に関する議論の場でも、州レベルで自分たちのニーズや意見を積極的に発言できるようになるなど、政治参画への足がかりとなりました。このことは、ICT技術が女性の経済的エンパワーメントだけではなく政治参画を促進するためのツールとして活用できるということを実践的に証明するものとなりました。

*プロジェクト終了後も効果は持続しています。2001年にはウクライナ政府により地方女性の状況改善のための特別措置を規定している「女性の地位向上とジェンダー平等達成のための全国行動計画」が採択され、さらに、地方女性のための特別計画が開発・開始されました。

グッド・プラクティス一覧へ戻る