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包括的な市場の開発(IMD)

民間セクターと協力しているUNDPのプログラムやプロジェクトの、内容や規模は各々大きく異なりますが、そのほとんどが「包括的な市場の開発(IMD)」を目的として実施されています。

包括的な市場とは、貧困層(とその他の排除されがちなグループ)を生産者、消費者、賃金労働者として捉え、そのような人々の選択肢と機会を拡大する市場を意味します。包括的な市場は、貧困層が必要とする雇用、商品、サービスを生み出すことができます。

UNDPは、数多くの発展途上国および移行経済国において、政策と構造インフラ、バリュー・チェーン統合、貧困層が入手しやすい商品とサービスの提供、起業家の育成、企業の社会的責任(CSR)等の分野における活動を通じて包括的な市場の開発に貢献してきました。これらの分野はUNDPの民間セクター戦略の柱となっています。

包括的な市場の開発(IMD)アプローチとは、包括的な市場の開発に障害となる要因に対し、様々なレベル(ミクロ:企業、共同組合など商品を消費者に供給するアクター、メゾ:商工会や開発機関など情報やサービスを仲介するアクター、マクロ:政策決定者)において対応し、貧困層にとって重要となる市場全体あるいは一部を対象とします。この障害とは、適切な政策の欠如、金融と市場への限られたアクセス、ビジネスとバリュー・チェーンのリンクの欠如、不十分なインフラへの対応力不足など多岐に及びます。そのため、各レベルに応じた対応が必要となります。

IMDアプローチでは、様々なレベルにおいて関係者全ての参加を推進しています。対象市場の選定、参加促進の方法は、開かれた参加型プロセスを通じて決定され、貧困層にとって重要な市場が選定されるよう注意が払われます。UNDPとその他の国連機関だけでなく、地方政府、学識者、民間組織、市民社会組織などのパートナー、利害関係者も、このプロセスに参加します。対象とする市場が選定された後、その市場に関連する利害関係者、投資家、先進企業などが特定されます。この一連のプロセスにより、貧困層へ機会を提供するという視点に基づく、貧困層の需要に起因する戦略アプローチが確保されます。

包括的な市場の開発(IMD)アプローチは、2003年に開始した持続可能なビジネス育成(GSB)プログラムを発展させたものです。GSBは開発に貢献しながらコアビジネスの推進を図る企業との革新的な連携アプローチです。これまでに、アジア、アフリカ、東ヨーロッパ、ラテンアメリカの15を超える国々で、中小企業から多国籍企業までの75を超える企業と連携して実施されました。プロジェクト数は50を超え、エネルギー、農業、水、情報通信、医薬品、金融サービス、製造業などの分野で、1万〜4百万米ドル規模の直接投資が実施されてきました。

現在でも、UNDPがプロジェクトを実施する国々でGSBプログラムは継続中ですが、多くはIMDアプローチへの移行段階にあります。この移行においては、ひとつの企業と連携するのではなく、初めに貧困層にとって重要な市場とバリュー・チェーンを選択し、次にそこで重要な役割を果たす複数の企業を選定します。IMDとGSBは現在、アンゴラ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、エジプト、エルサルバドル、インドネシア、カザフスタン、ケニア、コソボ、マダガスカル、マラウイ、モザンビーク、ナイジェリア、ウガンダ、ウズベキスタン、シリア、トルコ、ザンビアで実施されています。

包括的な市場の開発(IMD)の事例

インドネシアでは、津波によって荒廃したアチェ州の復興努力が、農民たちの機会を拡大するきっかけとなりました。2006年以降、UNDPは地方政府と協働しながら農民たちを外部市場と結び付け、輸出関連セクターにおける農民支援プログラムの開発を支援してきました。このプログラムによって、1農家あたり約1,000ドルの収入向上につながる受注が入るようになりました。さらに、2004年から2008年の間にアチェ州の人口約4%の貧困削減につながりました。

ブルガリアでは、2000年に政府が地元起業家をサポートするプログラムの立案・実施を開始しましたが、UNDPはこのプログラムを事業・金融サービスを提供する地元創設型のビジネス支援・育成センター(インキュベーター)設立を通じて支援してきました。この取り組みにより、約40,000の雇用機会と42の支援団体を統括するネットワークが創設され、これらの独立して財政的基盤の安定した支援団体は、26,000の起業家にサービスを提供してきました。さらにこのプログラムの一環として、ローンとリースを行う新たな金融機関の設立準備が現在進んでいるところです。

南米(ブラジル・コロンビア・エルサルバドル・グアテマラ・ホンジュラス・ペルー)において、UNDPは生物多様性の保全とコーヒー農家の持続可能な生計向上に貢献してきました。UNDPは国際的な自然環境保全団体のRainforest Allianceと連携して“Rainforest Alliance 認証”を発行し、認証された持続可能なコーヒーに対する需要を高めるため、商人、焙煎業者、小売業者といったコーヒー業界の主要関係者と協働してきました。2006年に始まったこの連携は約15,000人の農民を支援しました。これにより持続可能なコーヒーに対する需要が高まったことで、2006年に92,000ヘクタールであったコーヒー栽培認定地域が、今日では300,000ヘクタール以上に拡大しました。