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レベッカ・グリンスパン国連開発計画(UNDP)副総裁来日概要

日時:2012年7月7日-11日

レベッカ・グリンスパンUNDP副総裁は、「アフガニスタンに関する東京会合」への出席のため7月7日より5日間の日程で来日しました。この機会を捉え、関係国会議員や政府関係者等との意見交換を通じUNDPと日本の更なる戦略的パートナーシップ強化に努めたほか、特別講演を東京大学で行いました。来日概要は以下の通りです。

1.「アフガニスタンに関する東京会合」への出席

アフガニスタンに関する東京会合
©UNDP

7月8日(日)、日本政府およびアフガニスタン政府の共催により「アフガニスタンに関する東京会合」が開催され、グリンスパンUNDP副総裁は、潘基文国連事務総長の一行メンバーとして、またUNDP代表として同会議に出席しました。

外務省ウェブサイト(2012年7月8日)
アフガニスタンに関する東京会合(評価と概要)

2.関係国会議員及び政府関係者等との意見交換

グリンスパン副総裁は7月9-10日の両日にわたり、UNDPの日本における主要なパートナーと意見交換を行いました。

山根外務副大臣、三谷財務大臣政務官、高山環境大臣政務官との意見交換
山根隆治外務副大臣との意見交換では、「アフガニスタンに関する東京会合」、TICAD Vプロセスを通じたアフリカ開発、防災、ミレニアム開発目標(MDGs)達成およびポスト2015開発アジェンダ策定プロセス等が話題となりました。山根副大臣からは特に、今般のアフガニスタン会議の成功に至る日本政府の取組みについて説明がありました。これに対し副総裁からは、同会議の成功に祝意を表すると同時に、国連およびUNDPへの支援および、本会議を始め4月の「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」や7月の「世界閣僚防災会議in東北」等、日本主催の国際会議へのUNDPの参加招待に対する謝意と、今後一層の連携強化への期待を伝えました。

三谷光男財務大臣政務官との意見交換では、「アフガニスタンに関する東京会合」、地球環境ファシリティ(GEF)、グリーン経済と低炭素成長戦略等が話題となりました。三谷大臣政務官からは特に、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」において日本政府が発表した「緑の未来」イニシアティブに基づくグリーン経済移行支援等について紹介がありました。グリンスパン副総裁は、十分な民間投資がグリーン経済実現の鍵であり、公的資金はこれに触媒的な役割を果たすことが期待されていると指摘しました。さらに低炭素成長の分野においてUNDPが豊富な知見を有することを紹介し、UNDPの活動に対する日本の継続的な支援を要請しました。

高山智司環境大臣政務官との意見交換では、低炭素成長、リオ+20の成果に関連した意見交換を行いました。グリンスパン副総裁は4月に東京で開催された「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」の意義に触れ、日本の低炭素成長実現に向けたリーダーシップを高く評価しました。また、高山大臣政務官よりは、低炭素成長は貧困削減と同様達成が容易ではないとの言及があり、副総裁は貧困削減に向けたUNDPの取組みを紹介し、特に強靭な社会の構築に向けては災害リスクの軽減の視点の主流化や気候変動への適応策が重要であると指摘しました。さらに、リオ+20の成果文書に盛り込まれた持続可能な開発目標(SGDs)策定に向けた取組みについても意見交換を行いました。

山根外務副大臣(右)とグリンスパン副総裁
©UNDP
三谷財務大臣政務官(中央左)と
グリンスパン副総裁
©UNDP
高山環境大臣政務官(左)と
グリンスパン副総裁
©UNDP

福山参議院外交防衛委員会委員長、藤井参議院政府開発援助等に関する特別委員会委員長、平岡民主党総務委員長との意見交換
福山哲郎参議院外交防衛委員会委員長との意見交換では、「アフガニスタンに関する東京会合」、TICAD Vプロセスを通じたアフリカ開発、災害リスク軽減のほか、ミレニアム開発目標(MDGs)およびポスト2015開発アジェンダ策定プロセスについて意見交換を行いました。福山委員長からは特に、UNDPは日本にとりアフガニスタン支援や気候変動等、多くの開発課題を共有する重要なパートナーであるとの認識が示されると同時に、先般日本政府が主催した「世界閣僚防災会議in東北」へのUNDP総裁の出席に謝意が示されました。グリンスパン副総裁は、アフガニスタン会合の成功に祝意を表すると同時に、リオ+20におけるサイドイベント開催での協力を踏まえ「環境未来都市」の世界への普及等における更なる連携強化への期待を表明しました。これに対し福山委員長からは、今後連携が見込まれる分野として気候変動、災害リスク軽減、持続可能な開発といった分野への言及がありました。福山委員長とグリンスパン副総裁はまた、先に開催されたリオ+20の成果に関連し、持続可能な開発目標(SGD)とポスト2015開発アジェンダの関係等について、率直な意見交換を行いました。

藤井基之参議院政府開発援助等に関する特別委員会委員長との意見交換では、地球規模の開発課題について幅広い意見交換が行われました。藤井委員長からは特に、MDGs、平和構築、アフガニスタン支援といった重要な開発課題への日本の取組みに対するUNDPの協力を評価するとの発言があったのに対し、グリンスパン副総裁は日本のUNDPに対する継続的支援に感謝の意を表しました。また、藤井委員長がODAへの国民の理解と支持を促進することの重要性について言及したのに対し、副総裁は多国間機関を通じたODAの意義が日本国内で理解されるよう、UNDPとしても協力を惜しまない意向を伝えました。藤井委員長からは、震災直後に途上国を含む多くの国から支援を寄せられたことで、日本国内でも開発援助の意義が再認識されつつあると述べ、厳しい経済状況ではあるが可能な限り必要な開発援助支援を継続したいとの意向が示されました。

平岡秀夫民主党総務委員長との意見交換では、グリンスパン副総裁は、日本のODAを通じた長年にわたる開発への多大な貢献を高く評価し、震災後の困難な状況にもかかわらず日本よりUNDPの活動に継続的な支援が提供されていることにつき、深い感謝の意を表しました。また、防災やアフリカ開発をはじめとする日本とUNDPの連携分野における実績について紹介し、低炭素成長分野における連携の可能性について意見交換を行いました。

福山参議院外交防衛委員会委員長(右)と
グリンスパン副総裁(中央)と
弓削昭子UNDP駐日代表・総裁特別顧問
©UNDP
藤井参議院政府開発援助等に関する
特別委員会委員長(中央)とグリンスパン副総裁(左)と
弓削昭子UNDP駐日代表・総裁特別顧問
©UNDP
平岡民主党総務委員長(左)と
グリンスパン副総裁
©UNDP

堂道JICA副理事長との意見交換
堂道秀明国際協力機構(JICA)副理事長との意見交換においては、これまでの成果に鑑みUNDPとJICAの連携の有効性が再確認されると同時に、今後の更なる関係強化に向けた方策が話し合われました。堂道副理事長は特に、イラクをはじめとする各国における連携実績に加え、ポスト2015開発アジェンダ策定プロセスにおいてUNDPが主導的役割を果たしている点を評価しました。グリンスパン副総裁は、JICAとの連携により東京で開催された人間開発報告書(Human Development Report:HDR)2012年版制作のための東アジア・コンサルテーション、ポスト2015開発アジェンダに関するグローバル・コンサルテーション、アフリカHDR発表イベント等の成功に言及しました。また、今後一層の連携強化が期待される分野として、アフガニスタン支援、TICADプロセスを通じたアフリカ開発等について意見交換を行いました。

田中明彦JICA理事長(左)を
表敬するグリンスパン副総裁
©UNDP
堂道JICA副理事長(左)と
グリンスパン副総裁
©UNDP

3.イベント

「低炭素成長に関する勉強会」への出席
グリンスパン副総裁は7月9日午後、外務省において、4月に日本で開催された「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」のフォローアップとして、「低炭素成長に関する勉強会」を各省関係者等を対象に開きました。同勉強会では、副総裁の挨拶に続き、ヤニック・グレマレック地球環境ファシリティ(GEF) ユニット執行調整官/ UNDP開発政策局環境資金・環境エネルギー部部長が、UNDPの途上国の低炭素成長支援策について紹介し、活発な意見交換が行われました。

低炭素成長に関する勉強会
©UNDP
東大で講演をするグリンスパン副総裁(右)
©UNDP

東京大学における特別講演「私たちが望む未来 - 新しい開発枠組み」
グリンスパン副総裁は、東京大学法学部グローバル・リーダーシップ寄付講座の招聘を受けて、7月10日午後に「私たちが望む未来−公平性と持続性にもとづく新しい開発枠組み」をテーマとした特別講演を行いました。英語で行われた講義には、学生を中心に学内外から約100人の参加者が集まり、副総裁の講演に熱心に耳を傾け、活発に議論に参加しました。

グリンスパン副総裁は本講演において、先に開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)等でのポスト2015開発枠組の策定・合意に向けた議論に際して重要となる、開発(development)、公平性(equity)、持続可能性(sustainability)という3つの概念について、『人間開発報告書2011:持続可能性と公平性—より良い未来をすべての人に』等に示される国連およびUNDPの基本的立場を踏まえつつ簡単に紹介しました。さらに、今後のプロセスを、1)MDGsの期限内達成に向けた進捗の加速化、2)リオ+20で得た成果の実施、3)ポスト2015開発アジェンダの策定、という相互に関連した3分野に整理し、各プロセスの現状および国連に今後期待される役割について説明しました。また、人間開発報告書が世に送り出した人間開発指数をもとに、開発の持続可能性の側面も測定できる新数値を考案するべきである、というリオ+20においても提示されたUNDPの見解を再度紹介しました。最後に、環境問題のみならず雇用創出や格差解消等の開発課題に取組むうえでも持続可能性の確保・持続可能な開発はその重要性を増しており、経済・社会・環境の3要素を満たす開発、衡平性と持続可能性を中心課題に据え、「私たちが望む未来」の実現に向けた新たな開発枠組みの必要性を改めて強調しました。

グリンスパン副総裁による講演に続いて、参加者との質疑応答が行われました。参加者からは持続可能は開発に関連して具体的な指標づくりからポストMDGsとの関連性、強靭な社会づくりの重要性やジェンダーの役割等について活発な議論が行われ、盛況のうちに終了しました。