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人間開発報告書2004年版─この多様な世界で文化の自由を
アフリカではエイズによる壊滅的打撃が明らかに

ブリュッセル、2004年7月15日―

 国連開発計画(UNDP)が本日公表した今年の『人間開発報告書』により、サハラ以南アフリカの多くの国では、エイズ危機によって平均寿命が40歳以下へと低下しており、これが主要因となって、人間開発に関連した指標が全体的に下落傾向にあることが示された。

<HDIの動向>

 人間開発指数(HDI)によると、1990年以降に開発が後退した国は20カ国に上る。そのうち13カ国は、サハラ以南のアフリカ諸国である。同地域の8カ国(アンゴラ、中央アフリカ、レソト、モザンビーク、シエラレオネ、スワジランド、ザンビア、ジンバブエ)では、主としてHIV/エイズの流行から、国民の平均寿命が40歳以下へと落ち込んだ。レソト、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエでは、15歳から49歳までの人口に占めるHIV/エイズ感染者の割合が、5人に1人を超えている。さらに、ボツワナとスワジランドにおける感染者は3人に1人を上回る。

 「最も生産性の高い年齢層を襲うことから、エイズ危機は、国家のあらゆるレベルの機能を失わせる。行政から、保健医療、家族構成まで、エイズはありとあらゆるものを根底から破壊してしまう」とマーク・マロックブラウンUNDP総裁は語った。

 1990年代以降、かつてないほど多くの国で生活水準の低下がみられている。たとえば、サハラ以南アフリカの20カ国を含む46カ国では、10年前より一般市民の生活は貧しくなった。サハラ以南アフリカの11カ国を含む25カ国では、10年前に比べて飢えに苦しむ人の数が増加した。それ以前には、HDI順位の下落などほとんどみられなかった。しかし1990年以降は、20カ国(うち13カ国はサハラ以南のアフリカ諸国)が後退の憂き目にあっている。

 今年のHDI世界ランキングで、最下位を占めるのは、ブルンジ、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、シエラレオネの5カ国である。依然として壊滅的な内戦からの復興途上にあるシエラレオネは、7年連続で世界最下位となった。また、その他のサハラ以南アフリカ各国も、危機もしくは危機後の状況への対応に苦慮しており、これがこの地域の開発を遅らせるもう1つの障害となっている。

 一方、HDIの1位はノルウェーで、平均寿命は79歳、就学率は98%、1人当たりGDPは36,600米ドル(購買力平価(PPP)で調整)である。スウェーデン、オーストラリア、カナダ、オランダがこれに続く。世界最大の経済国である米国は8位、世界第2の経済国である日本は9位であった。

<人間開発を測る諸指数について>

 今年のHDIは、175カ国、および香港(23位)とパレスチナ(102位)における人間開発を測定している。
 今年のHDI指数には、世界で最も新しい国であると同時に、アジアの最貧国である東ティモール(158位)、ならびに太平洋の小島嶼国であるトンガ(63位)が新たに加えられた。国連加盟国のうち16カ国は、入手可能なデータが不足しているため順位に含まれていない。今年の順位は、すべての国について入手可能な最も新しい数字である、2002年の統計データを基にしている。

 1990年の創刊以来、HDIは『人間開発報告書』にとって欠かせない存在である。HDIは、保健医療、教育、所得の指標を組み合わせた指数で、1人当たり所得に比べ、人間の前進のより優れた物差しとなっている。世界中どこでも、人々が重要だと思うのは所得だけでない。充実した健康的で創造的な生活を営む能力も人々にとって大切なのである。たとえば、ベトナムとパキスタンの所得水準は似通っているが、ベトナムのほうが教育および保健医療へのアクセスを拡大するためにはるかに多くの取り組みを行ってきた。

 本報告書はまた、人間貧困指数(HPI)も掲載している。HPIは、知識、保健医療、飢餓、参加のそれぞれにおいて基準となるレベルに到達していない国民の割合を組み合わせたものである。HPIは所得貧困の測定だけにとどまらないため、貧困のより包括的な姿を示している。

 ジェンダー平等は人間の前進の重要な部分をなすが、HDIやHPIはこれを反映していない。そこで、ジェンダー不平等の測定に用いられているのが、ジェンダー開発指数(GDI)とジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)である。GDIは、達成度の測定にHDIと同じ指標を用いると同時に、男女間の達成度における不平等もとらえている。人間開発とジェンダー平等の間に著しい格差が見られるのは、インド、オマーン、パキスタン、サウジアラビア、イエメンの各国である。

 GEMは、経済・政治活動への女性の進出度を浮き彫りにする。GEMは、経済と政治の重要な分野への参加だけでなく、意思決定におけるジェンダー不平等にも焦点をあてている。GEMは、議席数に女性が占める割合、女性の議員・高官・管理職の割合、女性の専門職・技術職の割合をとらえている。さらに、経済的自立を表す、勤労所得におけるジェンダー格差も組み入れている。GEMの最上位は北欧諸国とオランダであるが、一方で、最も順位の低い国々にはアラブ地域の国々が含まれている。高所得であることがジェンダー平等を保障するとは限らず、日本のGEM順位は、フィリピンとボツワナより低い。

以上

本報告書について: 1990年以降、「人間開発報告書」は国連開発計画 (UNDP) の委託を受けて毎年作成され、独立した専門家チームが世界的に注目される主要な問題を検討してきた。学界、政界、市民社会の指導的立場の人々による世界的な諮問ネットワークが、本報告書で発表される分析と提言を支持するために、データ、見解、最善の慣行を提供している。人間開発の概念は、人間の進歩の尺度として1人当たり所得、人的資源開発、基本的ニーズを超えたところを見据え、人間の自由、尊厳、人間の活動などの要素、すなわち開発における人々の役割も評価する。『人間開発報告書2004』は、開発とは、単なる国民所得を上昇させることではなく、最終的には「人間の選択肢を拡大するプロセス」であると論じている。

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