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水ガバナンスと海洋ガバナンス

(c) F. Gerber/UNDP

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地球の水循環を通して、この惑星の淡水と海洋は密接につながっています。地球にある水の97パーセントは海洋にあり、雨や雪として陸地に降る水のほとんどすべてを海洋が提供します。わずかな割合しかない淡水のうち、約3分の1は地下水で、利用できる地表水は0.3%しかありません。現在、9億人弱が安全な水を利用できない状態にあり、27億人以上が基本的な公衆衛生設備にアクセスできない状態にあります。水の2015 MDGはグローバルに達成すべき目標ですが、地域や国による格差が大きく、特にサハラ以南のアフリカでは問題が深刻です。水と公衆衛生設備にアクセスできないことによる影響は、多くの国の社会経済開発にとって、大きな障害となっています。

世界的に海洋・沿岸資源と産業の市場価値は年間3兆ドルで、グローバルなGDPのおよそ5%を占めると推定され、世界の「生態系サービス」のおよそ63%が 海洋・沿岸システムによって提供されています。しかし、汚染、漁業資源の枯渇、珊瑚礁やマングローブ、海草などの沿岸生息地の消失、さらに水生侵入生物種をはじめとしたさまざまな人間活動によって、世界の海洋の40%もが「大きく影響されている」と考えられています。

このような非常に密接なつながりと、地球の淡水と海洋システムがもたらす膨大な社会経済上の利益を考えると、より効果的なガバナンスを推進することによって、淡水と海洋資源の管理に順応的で統合的な、生態系を基本としたアプローチをとる必要があることは明らかです。UNDPの「水と海洋ガバナンス・プログラム」は、調整されたプログラムやプロジェクトのポートフォリオを通して、 地方、国、世界、地域のレベルでそのようなアプローチを適用していきます。

・UNDPは、 貧困と脆弱性を削減し、生活を持続および向上させ、環境資源を保護するために、順応的な水ガバナンスを通して各国が公平な配分を達成し、能力を開発し、水資源管理への統合的アプローチを実現できるよう支援します。
・UNDPは人間開発を強化するための基本的な取り組みとして、水と公衆衛生サービスの公平な利用を推進し、支援します。UNDPは、政府、市民社会、民間セクター、その他の開発パートナーと協力し、貧困層のための水と公衆衛生サービスの拡大に必要な水ガバナンスの改善を実現します。
・UNDPは、効果的な海洋ガバナンスを通して、地方、国、地域、世界の規模で海洋管理を向上させ、生計手段を維持させるため、他の多くの国連機関、地球環境ファシリティ(GEF)、国際金融機関、地域漁業組織などと協力して活動しています。
・UNDPは、持続可能な方法で水と海洋資源を管理・開発するために、分野横断的能力を構築して効果的で健全な政策と機構を導入できるよう、各国を支援する機能的役割を果たします。UNDPは多様なトピックを扱う各種の能力開発プログラムを通して、トレーニング・コースとツール・キットの開発と幅広い提供に貢献します。

事実と統計
・適応する水ガバナンス―持続可能な水利用の鍵を握る
地球の水循環を通して、この惑星の淡水と海洋は密接につながっています。地球にある水の97パーセントは海洋にあり、雨や雪として陸地に降る水のほとんどすべてを海洋が提供します。3%しかない淡水のうち、3分の2は氷結し、3分の1は地下水で、利用できる地表水はわずか0.3%しかありません。利用できる再生可能な淡水資源のうち、約54%は既にさまざまな用途で人間に占有されており ―灌漑農業(70%)、工業(22%)、生活用水(8%)―さらに2025年までには開発途上国と先進国でそれぞれ 50%と18%の取水増加が見込まれています。公平性、効率性、環境の問題に取り組む統合的水資源管理(IWRM)は、貴重な水資源の持続可能な利用に向けて前進する方向として広く受け入れられていますが、IWRMの概念を実施するまでには、まだなすべきことが数多く残されています。

・水と公衆衛生 ―ガバナンスの危機
現在、9億人弱の人々が安全な水を利用できない状態にあり、27億人以上が基本的な公衆衛生設備を利用できない状態にあります。水の2015 MDGは達成すべき目標ですが、地域や国による格差が大きく、特にサハラ以南のアフリカでは問題が深刻です。公衆衛生のMDGは、13%にあたる10億人が達成できないと予測されています。水と公衆衛生設備を利用しにくいことによる社会経済的な影響は大きく、インド、ガーナ、カンボジアでそれぞれGDPの 6.4%、5.2%、7.2%が1年間に失われていると推定されています。水資源の利用可能な絶対量について地域や地方で長期的な不安がある一方、水と公衆衛生の危機は主に貧困、政治的意思、不公平性、権力の危機であり、簡単に言えば水ガバナンスの根本的な失敗ということになります。

・ガバナンスの失敗は海洋と沿岸の生態系を脅かす
世界的に見ると、海洋・沿岸資源と産業の市場価値は年間3兆ドルで、グローバルなGDPのおよそ5%を占めると推定され、海洋生態系サービス(気候、水、栄養素、炭素規制など)の非市場価値は年間22兆ドルと推定されています。海洋と沿岸の生態系は、汚染(特に栄養素)、魚の乱獲、生物生息地の消失と劣化、侵入生物種、気候変動(海洋酸性化、酸素の減少)による脅威に直面しています。世界の海洋の40%もが、人間の活動によって「大きく影響されている」と 考えられています。淡水について見ると、海洋生態系の過剰利用と劣化の多くの根本原因が、主に関連部門(漁業、観光、海運、農業など)のガバナンスの失敗? 不適切な政策と規制、貧弱な実施方法、機関の力不足、市民社会参加の不足に起因しています。