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紺野美沙子UNDP親善大使の東北視察報告(2011年10月20、21日)

宮城県七ヶ浜町の星のり店のご夫妻と紺野親善大使(C)Shinji Shinoda

宮城県七ヶ浜町の星のり店のご夫妻と紺野親善大使(C)Shinji Shinoda


南三陸町の佐藤仁町長(左)から説明を受ける紺野親善大使(C)Shinji Shinoda

南三陸町の佐藤仁町長(左)から説明を受ける紺野親善大使(C)Shinji Shinoda


タンザニアに送られる予定が急きょ南三陸町に届けられたライフイノベーションコンテナ(C)Shinji Shinoda

タンザニアに送られる予定が急きょ南三陸町に届けられたライフイノベーションコンテナ(C)Shinji Shinoda


紺野美沙子国連開発計画(UNDP)親善大使が2011年10月20、21日に東日本大震災で被災した宮城県仙台市、石巻市、南三陸町、七ヶ浜町を訪問し、復興に取り組む被災者や支援団体と意見交換をしました。

被災者との交流

被災地での復興に向けての取り組みを見せていただくため、全国の市民から寄付および出資を集めて被災地の事業者支援をするミュージックセキュリティーズ(株)市民ファンド「セキュリテ被災地応援ファンド」(以下、ファンド)から支援を受けて再建に取組む事業主の方々を訪ねました。

10月20日は、七ヶ浜町で海苔の養殖業を営む「星のり店」を訪問し、震災当時の様子と復興状況について話を伺いました。星のり店は昭和40年の創業以来、家族経営で、完熟のりを国内外に出荷していましたが、2011年3月11日の震災で海上の養殖設備(のり棚)が全壊し、海岸近くでの作業車や保有舟の多くが流出したため、事業の継続ができなくなりました。現在の3代目店主の星博さんは一時期廃業も考えられたそうですが、ファンドを通じて養殖に必要な最低限の機材を新たに揃えました。2011年の秋から、次の収穫に向けた準備を進めています。

次に仙台市の三陸おさかな倶楽部(津田鮮魚店仙台支店)を訪問しました。本店のある石巻市の漁業は津波で大打撃を受け、津田鮮魚店も使用していた機材、設備、車両が全て損壊し、店舗も「全壊」判定を受けました。現在はファンドの支援を受けながら、仙台支店での営業を再開し、本店の再開に向けて尽力しています。

10月21日は南三陸町を訪問し、水産加工業と小売業を営む(株)ヤマウチの山内正文社長ご夫妻を訪ねました。(株)ヤマウチでは地元三陸で獲れた魚介類の水産加工品などを販売していましたが、震災で本店、支店、IT事業部事務所、自社工場、従業員用住宅のすべてが全壊するなど甚大な被害を受けました。山内社長は津波被害を受けたその日から会社の再建を決意し、地方自治体やファンドの支援を受けながら復興に取り組み、仮店舗での営業を再開しました。また、南三陸町福興市実行委員会の実行委員長を務め、地域の方と協力して復興に務めています。

NGO・NPO・支援団体との交流、体験ボランティア
東日本大震災を受け、これまで海外で国際協力活動をしていた日本のNGOやNPOが東北の被災地に入り、多岐にわたる支援活動をしています。こうした団体の活動を支援している特定NPO法人「ジャパン・プラットフォーム」東北事務所を10月20日に訪問しました。ジャパン・プラットフォームは震災直後から、被災地で一貫して被災状況や支援ニーズの情報収集、支援の呼び掛け、パートナーNGOの活動支援や調整をしています。ジャパン・プラットフォームは従来、海外の緊急人道支援をする団体ということもあり、当初は自治体や被災者の方々に活動を理解してもらうのに苦労することもあったそうですが、現在はNGOの活動の輪が広がるに連れ信頼関係を構築し、現在は各機関と協力しながら復興支援に取り組んでいます。明城徹也・東北事務所は「今後はいかに被災地への関心を維持していくかが課題です」と話されました。

被災地での実際の活動を視察するため、石巻市に事務所を開設している認定NPO法人ジェン(JEN)を10月21日に訪問しました。JENは、世界各国で紛争や自然災害で厳しい状況にある方々への支援活動をしています。 東日本大震災では発生直後の3月13日に被災した地域に入り、被災者へ緊急支援から収入創出、心のケアを含む自立のために現地のニーズに合わせた柔軟な支援を続けています。今回はその中で、石巻市の牡鹿半島・東浜にある鹿立(すだち)地区でJENの支援で漁具作りをしている漁師とボランティアの方々を訪ね、紺野親善大使自ら 「漁網づくり」の体験ボランティアをさせていただきました。同じくJENの支援を受けてこの近隣で建設が進められている鮎川浜の仮設商店街「おしかのれん街」や渡波地区にある黄金浜会館(自治会館)で開催されている子どもの体操教室も訪問し、地元の方々から今後必要とされる支援などについてお話を伺いました。

東北大学学長と意見交換
仙台市の東北大学を10月20日に訪問し、井上明久総長、兵頭英治副学長らからもお話を伺いました。研究機材の損壊など大きな被害を受けた東北大学は、自らの復旧に取り組む一方、今回の震災の経験を後世に伝え災害に強い社会づくりに貢献するために、「東北大学災害復興・地域再生重点研究事業構想」を策定し、人材育成や地震に関する包括的な研究を推進していくという今後のプランにつても聞かせていただきました。

南三陸町町長と意見交換
町全体が甚大な被害を受けた南三陸町の佐藤仁町長を10月21日に表敬訪問しました。南三陸町役場は津波で全壊したために職員は皆仮設庁舎で仕事をしています。佐藤町長は震災直後の町の状況について説明された後、今後は被災地外の人々が被災地への関心をもち続けてもらうことが願いだと語られました。仮設庁舎ではまた、パナソニック(株)が寄贈したライフイノベーションコンテナ(注1)を視察しました。

東北訪問を終えて
今回の東北視察は短い期間でしたが、関係団体のご協力により、復興に取り組むさまざまな立場の方々から話を伺うことができました。UNDPは毎年、世界80か国以上で「危機予防と復興」に取り組んでいますが、東日本大震災のような大規模な自然災害からの復興には長い時間と資金、そして多くの人々の継続的な努力が必要となることを改めて痛感しました。今回の訪問では、被災者の方々の復興に向けた強い意志と着実な取り組みを学べた一方、お会いした方々からは被災地への関心が低くなることを懸念する声をよく耳にしました。UNDPは紺野親善大使とともに、今回の視察で学んだことを広く世界と共有していくと同時に、世界の復興現場での経験を被災地に、日本に伝えていきます。

(注1)ライフイノベーションコンテナはUNDPタンザニア事務所を介して2011年3月末にミレニアム・ビレッジ・プロジェクトに寄贈される予定でしたが、震災発生を受けて急きょ計画を変更し、パナソニック(株)から南三陸町へ寄贈されました。南三陸町役場の電力源として使われています。タンザニアには同年10月にライフイノベーションコンテナが寄贈されました。

紺野親善大使の視察模様の動画はこちらからご覧いただけます。英語ナレーション付はこちらからご覧いただけます。