国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所のウェブサイトは2013年9月に移転しました。

新ウェブサイトはこちらからご覧いただけます。


UNDP事業紹介:気候変動と災害に強い開発に向けたUNDPの取り組み

2013年9月6日

ソロモン諸島オントン・ジャワ環礁における気候変動に強い作物品種導入の取組み (C)PACC Solomon Island

ソロモン諸島オントン・ジャワ環礁における気候変動に強い作物品種導入の取組み (C)PACC Solomon Island


今、災害に強い開発を実現するための取り組みが注目されています。開発を進展・定着させるためには、被害を最小化すると同時に万一被災しても速やかに回復できる、災害に負けない「しなやかな強さ」を身につけるための長期的支援が欠かせません。このような回復力の構築は特に、気候変動への対応能力を強化しようとする際に極めて重要となります。国連開発計画(UNDP)は、今後3年間の方向性を定めた『UNDP活動方針2014-2017』(2013年9月の執行理事会で承認予定)で、組織によるあらゆる開発支援活動を通じて回復力の構築に貢献することを明記すると同時に、気候変動により拡大する自然災害の被害リスク軽減を7つの活動目標のひとつに掲げています。

UNDPは特に、多方面にわたる気候変動の影響に対処するためには従来のセクター別アプローチから包括的アプローチへの転換が必要であるとの認識に基づき、「環境に優しく、低炭素で気候変動への対応能力にすぐれた開発戦略(Green LECRDS:Green, Low-Emission and Climate-Resilient Development Strategies)」を打ち出しています。Green LECRDSは、緩和(mitigation)と適応(adaptation)という気候変動対策のアプローチと、災害リスクの軽減・被災地の復旧と復興・貧困削減といった開発面からのアプローチを、ひとつの戦略の下に集約することで、個別の取り組みをプログラムとして統合します。これにより、資金や人材の効率的活用と相乗作用の実現に取り組み、各国による気候変動への対処をより効果的なものとします。支援にあたっては、気候変動対策と開発支援の両方の経験を有し、特に140か国以上で気候変動枠組条約締約国の国別報告書の作成を支援しているUNDPの経験が活かされています。

Green LECRDS支援には、1)資金拠出から実施まで様々なプロセスに関わる関係者のための協議枠組みの設置、2)気候変動の影響調査や予測シナリオ作成、3)対応策の検討、4)対応策の実施・資金調達方法の検討、5)実施ロードマップの策定、等が含まれます。UNDPはこれまでに、約90か国でGreen LECRDSへの支援実績を有しています。

Green LECRDSの下で推進される取組みは、1)包括的な気候変動戦略の策定支援、2)気候変動に対する強靭性を高める多角的生計向上支援、3)気候変動に左右されない開発のための気候情報・早期警戒システム強化、という3分野のプログラムにまたがります。


UNDPは、Green LECRDSの下で推進される3分野のプログラムのなかでも、「気候変動に対する強靭性を高める多角的生計向上支援」分野における取り組みを通じ、気候変動による影響を勘案した生計向上支援を行っています。気候変動は貧困層、特に女性や少数民族の生活を様々な形で脅かしています。これに対処すべく、食糧の安定的供給、水資源の保全、沿岸地域開発、公共衛生等、多角的な観点から、気候変動リスクの管理を支援しているのが特徴です。

本プログラムの一環としてUNDPは、大洋州14か国において、「大洋州気候変動適応プロジェクト(PACC)」を、地球環境ファシリティ(GEF)、豪州国際開発庁(AusAID)等からの資金拠出により実施しています。2009年に始まった同プロジェクトは、気候変動の深刻な影響に直面している同地域で、各国のニーズに合わせた適応策の実施を支援しています。例えば、水不足に直面していたツバル、トンガ、ナウル等では、コミュニティや家庭における集水・貯水能力の向上、漏水防止、節水キャンペーンや太陽光を利用した浄水システム導入を通じ、生活用水の確保と質の向上に貢献しました。また、気候変動が食糧供給量に及ぼす影響が心配されていたソロモン諸島、フィジー、パラオ等では、穀物の作付けにあたって気候変動に強い品種を導入し、土壌や水資源の保全に向けた取り組みを行っています。

*Green LECRDSの概要は以下ページをご覧ください。
環境に優しく、低炭素で気候変動への対応能力にすぐれた開発戦略(Green LECRDS)