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シンポジウム報告
「気候変動の危機に挑む」
(国連開発計画(UNDP)主催、神戸新聞共催)

 6月20日(土)、神戸メリケンパークオリエンタルホテルで、シンポジウム「気候変動の危機に挑む」(国連開発計画(UNDP)主催、神戸新聞共催)が開催されました。このシンポジウムは気候変動が開発途上国の人々にどのような影響を与えるか、そして気候変動を食い止めるために自治体や市民に何ができるのかを問いかけることを目的に開催され、200人近い市民の方々が参加しました。

 基調講演を行った紺野美沙子UNDP親善大使は、途上国の環境問題と気候変動影響について、海外視察で訪問したプロジェクトやその土地ならではのエピソードも交えながら、先進国の日本、そして地域から行動を起こしていく必要性を訴えました。モンゴルやタンザニアにおけるUNDPの環境問題に関する取り組み、そして紺野親善大使自身がクイズ番組の賞金を寄付して行った東ティモールの植林事例を紹介し、「今すぐにでも、できることから取り組まなければ、取り返しのつかないことになってしまう。皆さんも危機感をもって行動に移してほしい。」と来場者に呼びかけました。


基調講演を行う紺野美沙子UNDP親善大使

講演後にご来場の皆様と

 続いて行われたパネルディスカッションでは、UNDPのほか、気候変動に取り組んでいるアカデミア、市民社会そして地方自治体の代表がパネリストとして参加し、慶山充夫 論説委員室副委員長がコーディネータ―を務めました。


村田俊一UNDP駐日代表

 UNDPの村田俊一・駐日代表は、気候変動が開発途上国の人々に与えている影響について紹介し、気候変動と戦うには温室効果ガスの排出を削減する「緩和策」および気候変動に人々が適応できるよう支援する「適応策」の2つが重要であると訴えました。そして日本有数の産業地帯として優れた環境マネジメントのノウハウをもち、また阪神・淡路大震災を乗り越えた兵庫県・神戸市の積極的な貢献を呼びかけました。

 続いて、神戸を拠点とする特定非営利活動法人SEEDS Asiaの中川裕子事務局長が発表を行い、モルディブで行っている事業について紹介しました。自然災害の増加に対しての適応策に取り組む様子や、人々の環境への意識を高める取り組みについて、特に女性や子どもなどの脆弱な人々が取り残されてしまう島の現状を踏まえながら説明し、「自分たちが気候変動の危機にさらされているとの自覚がない人々に対しても、環境を守っていくことが、すなわち防災に繋がることを理解してもらうことが重要」と語りました。

 兵庫県立大学経済学部で環境経済を研究している新澤秀則教授は、気候変動をめぐる国際的な議論について説明し、「コペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)では、先進国と開発途上国が一緒になって緩和策を検討することが期待される。」と指摘しました。さらに2005年に神戸で採択された国際協力指針『兵庫行動枠組』が気候変動を考えていくうえでも、非常に重要な意味をもつことを、神戸市民の皆さんに改めて呼びかけました。


左からSEEDS Asiaの中川裕子事務局長、
兵庫県立大学経済学部の新澤秀則教授、
兵庫県農政環境部の園田竹雪参事

慶山充夫 社論説委員室
副委員長

 兵庫県農政環境部の園田竹雪参事は、兵庫県の温室効果ガスの排出量は7200万トンと、スウェーデン一国の排出量に匹敵していることを指摘し、日本国内での排出削減に関する人々の正しい理解が重要だと訴えました。そして兵庫県が推進しているさまざまな環境対策を紹介し、排出削減のためには行政だけでなく、市民の理解と参画が必要だと語りました。また具体的な排出削減モデル事業やサッカーイベントなどの開催を通じた広報活動、さらに世帯訪問をして各戸のエネルギー診断を行い、効率的なエネルギー利用を促す「ウチエコ」などの取り組み事例を紹介しました。

 最後に、慶山コーディネーターは、「気候変動に取り組むには、行政・地域・市民社会そしてひとりひとりの連帯が大切。次世代に胸を張ることのできるような地域モデル構築のために、今後も市民への呼びかけを続けたい。」と締めくくりました。