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ニュースルーム −プレスリリース−

2010年11月05日

人間開発報告書2010: 40年間にわたる人間開発のトレンドの分析によって、貧しい国が急速に発展していることが判明

【2010年11月4日】 しばしば過小評価されているが、ほとんどの途上国は過去40年間に、保健、教育、基本的な生活水準の面で目覚ましい進歩を遂げている―人間開発指数(HDI)の長期の変遷をあらためて詳しく分析したところ、この点が明らかになったと、本日、発表された人間開発報告書2010は指摘している。著しい進歩を遂げた国の中には、最も貧しいグループに属する国も多い。

しかし、国によって状況が大きく異なることもまた事実である。本報告書で指摘されている通り、1970年以降、状況が悪化した国もある。今回新たに3つの指数を導入しながら、本報告書は、国内および国家間の大きな格差や、さまざまな開発指標における女性と男性の間にある大きな不平等、さらに南アジアとサハラ以南アフリカ諸国に蔓延する極度の多次元貧困について取り上げている。

人間開発報告書は、国連開発計画(UNDP)の委嘱を受けて1990年以降毎年刊行されているが、UNDPから独立して編集されている。

人間開発報告書2010『国家の真の豊かさ―人間開発への道筋』は本日、潘基文国連事務総長、ヘレン・クラークUNDP総裁、人間開発報告書を創刊した経済学者の故マブーブル・ハックとともにHDIの考案に協力したノーベル賞経済学者アマルティア・センによって発表された。人間開発報告書とHDIは、国の発展を経済的基準だけで考える発想に異を唱え、保健、教育、生活水準全般の 進捗の捕捉を地球規模で継続的に行うように呼び掛けることによって、国連のミレニアム開発目標の構想の土台を築いた。

潘事務総長は「人間開発報告書は、私たちの世界の見方を変えてきました。経済成長はとても重要である一方で、究極的に大切なことはその国民所得を使って、人々がより長く、健康で、生産的な生活を送る機会を与えることだと学びました」と語った。

人間開発報告書の創刊号は、先駆的な指数であるHDIを導入し、それ以前の何十年にもわたる開発指標を分析したうえで、「経済発展と人間開発の間に自動的な関連性はない」と結論づけた。人間開発報告書2010は、1970年以降のHDIに関する指標を見直し、精力的に長期トレンドの分析を行った結果、国の経済成長と、所得以外のHDI構成要素である保健および教育面での成果との間には、一貫した相関関係がないことを明らかにした。

ヘレン・クラーク総裁は「本報告書が示しているように、今日の人々は以前に比べて、より健康で、より豊かで、より教育を受けています。すべてが好ましい傾向ばかりではありませんが、たとえ厳しい環境下でも、人々の生活を改善するために国ができることはたくさんあります。そのために必要なのは、地域レベルの勇気あるリーダーシップと、国際社会による継続的な支援です」と述べた。

過去40年のHDIデータを完全に入手できたすべての国々を分析した結果、平均余命は1970年の59歳から2010年には70歳へと伸び、初等・中等教育の就学率は55%から70%へ上昇し、一人当たりの国内総生産(GDP)は倍増して1万ドルを突破した。世界のすべての地域で状況は改善しているが、その度合いにはばらつきがある。たとえば、アラブ諸国の平均余命は1970年から2010年の間に18年も伸びたが、サハラ以南アフリカ諸国では8年しか伸びていない。本報告書では135カ国、世界の総人口の92%を調査対象としている。

本報告書の執筆責任者であるジェニ・クルーグマンは「本報告書は、新しいデータと分析を通じて、人間開発報告書の創刊時からの2つの中心的な主張を再確認しています。それは人間開発と経済成長が同一でないということと、経済が急速に成長せずとも大幅な人間開発は達成可能だということです。さらに、著しく優れた成果をあげている国々と、さまざまな発展のパターンについても、新たに理解することができました」と述べた。

40年間のHDIデータが入手可能な135カ国中、もっともHDIを改善した上位10カ国の中で、第1位となったのは、エネルギー産業で得た収益を何十年も教育と医療・保健に投資してきたオマーンだった。

2位以下の順は、中国、ネパール、インドネシア、サウジアラビア、ラオス、チュニジア、韓国、アルジェリア、モロッコであった。そして驚くべきことに、所得の上昇だけで上位10カ国に入ったのは、中国だけであった。他の国々のHDIを改善する原動力になったのは、保健と教育だった。さらに、11位以下の10カ国の中には所得は、低いものの、HDIを伸ばしている、報告書の表現を借りれば「成功している国とはあまり言われない」国々もいくつか含まれている。たとえば11位のエチオピア、15位のカンボジア、18位のベナンなどである。こうした国々はすべて、教育と公衆衛生の状況が大きく改善している。

世界全体で見れば、総じて状況は改善しているが、国による状況の違いは著しいものがある。過去40年間のHDI上昇率が低い、最下位の4分の1の国々は、HDI値の上昇率は20%に満たないのに対し、最上位グループの国々はHDI上昇率が平均54%に達している。その半面で、1970年のHDIの絶対値が下から4分の1の国々は、この40年間で平均してHDI値を61%上昇させている。こうした調査結果を受けて、国々が発展を実現する道筋は、本報告書に記すようにさまざまであり、持続可能な発展を実現する方法は1つでないのだと執筆陣は強調している。

1970年以降、最も急速にHDIが上昇している地域は、中国とインドネシアが主導する東アジアである。アラブ諸国もHDIを大幅に上昇させており、過去40年間の上昇率上位20カ国のうち8カ国がアラブ諸国である。その一方で、サハラ以南アフリカ諸国と旧ソ連圏の多くの国は、エイズ、紛争、経済的混乱などの要因により後れを取っている。旧ソ連の3カ国(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア連邦)とサハラ以南アフリカ諸国の6カ国(コンゴ民主共和国、レソト、南アフリカ、スワジランド、ザンビア、ジンバブエ)では、平均余命が短くなった。

世界規模の大きな流れを見ると、国による平均余命の差が縮まりつつある。ほとんどの貧しい国々でも、平均余命は先進諸国の水準に近づいている。しかし所得について見ると、状況は異なっており、豊かな国が着実に豊かになる一方、多くの貧しい国が持続可能な成長を達成できていない。

「世界は大きな進歩を遂げたが、この数十年の変化がすべて好ましいものだとは到底言うことはできない」と、執筆陣は書いている。「一部の国々は、特に保健の面で大きく後退しており、しばしば数十年間の進歩がわずか数年でかき消されてしまった例もある。経済成長に関しては、どの国が速いペースで成長するかという面においても、成長している国の中でどの層がその恩恵を受けるかという面においても、極めて不均等な状況が出現している。世界各国の人間開発の格差は、狭まりつつあるとはいうものの、いまだに大きい」。

★2010年のHDI値、および不平等、ジェンダー、貧困に関する新しい指数★
本報告書では、HDIを構成するいくつかの重要な指標を変更したうえで、2010年の新しいHDI順位を掲載している。2010年のHDI値の上位10カ国は、上から順に、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、アイルランド、リヒテンシュタイン、オランダ、カナダ、スウェーデン、ドイツである。169カ国中の下位10カ国は、下から順に、マリ、ブルキナファソ、リベリア、チャド、ギニアビサウ、モザンビーク、ブルンジ、ニジェール、コンゴ民主共和国、ジンバブエである。

長期的な傾向を浮き彫りにするために、本報告書ではこれまでと異なり、5年間ごとのHDI順位の変動を示した。なお、HDIの算出方法が変更されているので、本報告書の値と過去の報告書の値を直接比較することはできない。
 また2010年の人間開発報告書は、指標を絶えず改善してきた人間開発報告書の伝統に則り、新しい指数を導入し、重要な開発要素でありながら、HDIに直接反映されない要素を取り上げている。

●不平等調整済み人間開発指数(IHDI)―人間開発報告書2010では初めて、所得、保健、教育の各分野での不平等を反映してHDIの値に修正を加えることにより、不平等の観点からHDIを精査した。クルーグマンは「HDIは、国単位の平均値からなる指数であり、それだけでは国内の格差を明らかにしません。そこで不平等の程度に応じて調整を加えることによって、人々の福祉に関する全体像を示せるようになりました」と語った。

●ジェンダー不平等指数(GII)― 人間開発報告書2010は、妊産婦死亡率や議会における女性議員比率などを含めた、ジェンダーの不平等に関する新しい指数を算出した。「ジェンダー不平等指数は、男女間にある深刻な社会的・経済的不平等が人間開発に及ぼす負の影響を測るために設計されました」と、クルーグマンは述べた。GIIは、ジェンダーの不平等によって国のHDIがどの程度減少しているのかを示している。GIIにおいて、最も平等な国であったのはオランダである、最も不平等な国だったのはイエメンであった。

●多次元貧困指数(MPI)―人間開発報告書2010では、所得に基づく貧困判定を補うために、基本的な生活水準から、学校教育、安全な水および保健医療へのアクセスなどの複数の要素を世帯単位で着目する新しい多次元貧困指数を導入した。その結果、多次元貧困状態で暮らしている人の数は、推計でMPIを算出できた104カ国の総人口の3分の1に相当する約17.5億人に上った。これは、1日当たりの所得が1.25米ドル以下で生活していると推計される14.4億人を上回る人数である。

本年版の人間開発報告書では、政治的エンパワーメントや環境の持続可能性など、人間開発のそのほかの重要な側面での課題を把握するために、学術研究をいっそう発展させ、データを充実させる必要性を訴えている。

UNDPの人間開発報告書室は、人間開発報告書創刊20周年にあたり、ウェブサイト(http://hdr.undp.org)を刷新し、膨大な量の新しい資料、国連加盟国すべての新しい統計、閲覧者が「自分自身で指数をつくる」ための双方向型のツールなどを用意した。

アマルティア・センは、本報告書に寄せた序文でこう書いている。「人間開発報告書が創刊されて20年、これまでに成し遂げたことは大いに称賛に値する。しかしその一方で、旧来の問題の評価方法を改良する手立て、さらには人間の幸福と自由を脅かす新たな脅威を発見し、それに対処するための手立てを見出す努力を忘れてはいけない」。

【BOX】人間開発報告書2010の地域ごとの注目点

人間開発報告書2010では、HDIの長期的変遷と新しい指数の導入によって、途上国世界の地域ごとの大きな成果と課題、そして異なる開発のパターンを明らかにした。

アラブ諸国: 1970年以降HDIを最も改善した「HDI改善上位10カ国」のなかに、5つのアラブ諸国が名を連ねている。その国々とは、オマーン(1位)、サウジアラビア(5位)チュニジア(7位)、アルジェリア(9位)、モロッコ(10位)である。しかしジェンダー不平等指数(GII)では、ジェンダーの不平等によるHDI値の減殺幅が地域平均で70%に達している。これは世界平均の56%を大きく上回る。GIIの値が世界最低の国はイエメンで、その減殺幅は85%に上る。


ラテンアメリカ・カリブ海諸国: ラテンアメリカ・カリブ海諸国は、依然として所得格差の大きさが世界で最も深刻な地域である。最も格差が拡大しているのがアルゼンチンで、そのあとにベネズエラ、ハイチと続く。しかし、ブラジルやチリなど、いくつかの国では所得格差が縮まっている。この地域の平均余命は、1970年の60歳から74歳に上昇した。チリ、コスタリカ、キューバの平均余命は79歳に達している。就学率も40年前の52%から今日の83%まで上昇し、いくつかの国ではほぼ100%に近づいている。

サハラ以南アフリカ諸国: しばしば見逃されがちであるが、極めて困難な状況に直面しながらも、多くのアフリカ諸国は、この数十年で人間開発を前進させている。1970年以降のHDIを改善した上位25カ国(135カ国を対象)の中に、エチオピア(11位)、ボツワナ(14位)、ベナン(18位)、ブルキナファソ(25位)の4カ国が入っている。これは主として、教育と保健の状況が大きく改善したためである。しかしその一方で、1970年と比べてHDIの値が下落した世界の3カ国もこの地域である(コンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ)。これは、紛争とエイズにより平均余命が下落したことにある。女性の議会への進出は、南アジア、アラブ諸国、東ヨーロッパより高い水準にあるが、教育分野のジェンダー格差によってその効果は相殺されている。

南アジア: 長期HDI改善国リストの上位には、ネパール(3位)、インド(16位)、イラン(20位)、パキスタン(25位)、バングラデシュ(26位)と、南アジアの国が名を連ねている。しかし、本報告書が新たに導入した多次元貧困指数によると、極度の貧困状態で生活する人の数は、南アジアが世界で最も多い。多次元的に貧困状態にある人の数は、サハラ以南アフリカ諸国が4億5800万人なのに対し、南アジアは8億4400万人に達する。

東アジア・太平洋諸国: 目覚ましい経済成長により、地域平均のHDI値は1970年の0.36から2010年には0.71と、ほぼ2倍に上昇した。これは、世界のすべての地域のなかで最も大幅な上昇である。世界の「HDI改善率上位10カ国」のうち、5カ国をこの地域の国が占めている。(中国(2位)、インドネシア(4位)、ラオス(6位)、韓国(8位))。しかし、所得の上昇に伴い、所得の格差も拡大しており、不平等調整済みの値に修正すると、この地域のHDIは20%以上落ち込む。

東ヨーロッパ・中央アジア: 地域レベルの不平等調整済みHDIにおいては、教育・保健・所得の3側面ともに比較的平等であるが、地域内の格差はかなり大きい。この地域でHDIが後退した主な原因としては、旧ソ連の3カ国(ベラルーシ、ロシア連邦、ウクライナ)で平均余命が1970年当時より下落したことがあげられる。

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本件に関するお問い合わせは
国連開発計画(UNDP)東京事務所 西郡
電話:03-5467-4751


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