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ニュースルーム −プレスリリース−

2008年07月02日

貧困層を対象とした新たなるビジネス戦略を提言する報告書「すべての人々のために価値を創造する:貧困層を対象にしたビジネス戦略」を発表

【2008 年7 月1 日、ニューヨーク】 国連開発計画(UNDP)は7月1日、画期的な報告書「すべての人々のために価値を創造する:
貧困層を対象にしたビジネス戦略(原題: Creating Value for All: Strategies for Doing Business with the Poor)」を発表した。
本報告書は、企業が従来の商業活動からさらに活動を拡大し、貧困層を経済成長のパートナーとして巻き込むための戦略やツールを提供するものである。UNDPの包括的な市場育成イニシアティブ(“Growing Inclusive Market Initiative”)の一環としてまとめられた本報告書は、広範な事例研究に基づき、より包括的なビジネス・モデルが人間開発にとっても富の創造にとっても効果的であることを示している。
潘基文・国連事務総長は最近ミレニアム開発目標(MDGs)に向けた行動の呼びかけの中で、これまでの進展を加速させ、2008 年
を貧困との闘いにおける転換点とするよう、国際社会の努力を促した。本報告書は、この国際的な努力において民間セクターが参加
できる具体的な方法を示している。

貧困層は、ほとんど手付かずの購買力、生産力、革新性や起業家精神の潜在能力を有している。新たなビジネス・モデルによっ
て貧困層を取り込めば取り込むほど、企業はより収益を追求できるようになり、MDGs の達成に寄与することができる。
しかしながら、企業の力だけでは、貧困層のニーズを満たすことも、ビジネスを行う上での障壁を乗り越えることもできない。本報
告書では、市場での活動の効果を最大限得るために、各国政府、共同体、非政府組織(NGO)、援助国や国際機関が何をが出来る
のかを概説している。

ケマル・デルビシュUNDP総裁は、「貧困層が市場活動から恩恵を受けられるか否かは、彼らが市場に参画する能力と市場機会を
如何に活用できるかにかかっている。貧困層を対象とするビジネス・モデルは、幅広い支持を必要とするが、すべての人々に対して
利益をもたらすであろう。」とのコメントを本報告書に寄せている。
本報告書では、民間企業が貧困層を対象にしたビジネスを展開する上でよく直面する障壁を乗り越えるために活用した、5つの
戦略に焦点をあてている。その5つの戦略とは、

• 商品やサービスを適応させること。
• 制約を取り払うためにインフラ整備やトレーニングに投資すること。
• 貧困層の強みを、労働力と経営力の向上および現地の知識の拡大に活用すること。
• 同じ意識を共有する民間企業や非営利組織、公共サービス提供者と協働すること。
• 政府との政策対話に関わること。


「多くのより包括的なビジネス・モデルの余地がある。また包括的な市場の余地もある。そしてずっと大きな価値創造の余地がある。
マハトマ・ガンディーの言葉を借りれば、『世界のほとんどの問題は、私たちが出来ることとしていることの違いから生じている』という
ことである。」と本報告書の著者は述べている。
本報告書では、開発途上国と先進国の研究者が調査した50の事例が紹介されている。これらの事例は、現地企業または中小規
模の国際的企業、あるいは多国籍企業が、収益と社会的インパクトを成功裏に追求できることを示している。

中国では、ある企業は教育をあまり受けられなかった人々に対し、低コストのオペレーション・システムを通じて、手ごろな価格の
パソコンとトレーニングを提供し、市場基盤の拡大を果たした。

コンゴ民主共和国では、金融部門は長年の紛争によって破壊されたが、ある携帯電話会社が暗号化されたショート・メッセージ・サ
ービスの技術を提供したことで、顧客は送金できるようになり、同社は現在国内に2百万人の顧客を持つまでになった。

ケニアでは、ヘルス・ケアのマイクロ・フランチャイズ化によって個人事業者が、月々の収入を増加させる一方で、地方農村部や都
市部のスラムでマラリアや病気に苦しむ40 万人の患者に医療を提供している。

メキシコでは、ある建設会社が、アメリカ合衆国に住む14,000人のメキシコ人出稼ぎ労働者に、故郷のメキシコで家を建築、購入も
しくは改修するできるよう支援を行っている。この会社は、2002 年から2006 年の間に建築材の販売1220 万米ドル分の建築材を売上
げ、2005 年末以降だけで200 軒の住宅を販売した。

モロッコでは、ある欧州の上下水道会社の子会社は、カサブランカの貧民街で、コミュニティ代表者を直接雇用し、マネジメントと
技術訓練を提供し、現場管理を確かにし、水と電力へアクセスできる人々の比率を劇的に上昇させた。現在では3 万軒以上の新世
帯がカサブランカの電気供給会社と接続されており、一世帯あたりのエネルギー使用料金は月17米ドルから6米ドルへと下がった。

ロシア連邦では、マイクロ・ファイナンス事業を行うあるNGO が銀行へと転換し、商業資本へのアクセスを提供し、より多くの顧客を
得た。この銀行は2006 年だけで直接的に4,250 件、間接的に19950 件の雇用創出を支援した。2007 年には、貸出し債権総額は
6000 万米ドル以上、融資から得られた金融純益は200 万米ドル以上と見積もられている。

こうした50 の事例に加え、本報告書では、関心のある民間企業に対し、新しい手法(ツール)を提供している。戦略マトリックスは、
貧困層ビジネスによくある制約に対して潜在的な解決策を探すのに役立つ一方、別の新たなツール(”heat maps”)は、市場の視覚
的概観を提供し、一目で潜在的な新しい市場が分かるようになった。例えば、グアテマラの地図をみると、西部では一日2 米ドル以
下で暮らす人々のうち13%はクレジットへのアクセスはあるが、東部では8%未満であることなどが解るようになっている。

詳細に関するお問い合わせ:

UNDP ニューヨーク本部
Cassandra Waldon, Tel: +1 212 906 6499
cassandra.waldon@undp.org

UNDP 東京事務所
西郡 広報・市民社会担当官:03-5467-4751
toshiya.nishigori@undp.org

UNDP 主導によるGrowing Inclusive Markets(GIM)イニシアティブは、人類の前進と富の創造の追及が双方の利益に寄与する、
より包括的なビジネス・モデルを促進するための基盤です。必要とされる情報を収集し、優良事例に焦点をあて、実用的な
運用戦略を開発し、そして対話の場を提供します。詳しくはwww.growinginclusivemarkets.org


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