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第17回UNDP職員リレーエッセイ「開発現場から」 UNDPガイアナ事務所常駐副代表 三上知佐さん

2013年7月26日

「ガイアナの盾」地域プロジェクトの署名式。欧州連合(EU)、ブラジル、ガイアナ、スリナム政府代表と共に。2012年2月撮影。(C)UNDP Guyana

「ガイアナの盾」地域プロジェクトの署名式。欧州連合(EU)、ブラジル、ガイアナ、スリナム政府代表と共に。2012年2月撮影。(C)UNDP Guyana


UNDPガイアナ事務所スタッフ。ガイアナ訪問中のラテンアメリカ・カリブ局長と共に。2012年10月撮影。(C)UNDP Guyana

UNDPガイアナ事務所スタッフ。ガイアナ訪問中のラテンアメリカ・カリブ局長と共に。2012年10月撮影。(C)UNDP Guyana


中小企業家女性向けセミナーにて、国連の女性のエンパワーメントに向けた取り組みについて説明。2012年11月撮影。(C)UNDP Guyana

中小企業家女性向けセミナーにて、国連の女性のエンパワーメントに向けた取り組みについて説明。2012年11月撮影。(C)UNDP Guyana


「世界環境デー」ウォークの後、国連ボランティア(UNV)の皆さんと。2013年6月撮影。(C)UNV Guyana

「世界環境デー」ウォークの後、国連ボランティア(UNV)の皆さんと。2013年6月撮影。(C)UNV Guyana


ガイアナは、日本からはちょうど地球の反対側、南米大陸の北端に位置します。ガイアナには日本大使館も無く、在留邦人も現在大人はわずか4人、日本からは「遠くて遠い国」と言えます。広さは日本の本州ほどですが、そこに80万に満たない人々が暮らしています。その分国土は緑豊かで、文字通りの「手付かずの自然」がまだ残されています。

ガイアナは1966年にイギリスから独立しました。その歴史的経緯から、南米大陸では唯一英語が公用語として使用され、同じくかつてイギリスの植民地だった他のカリブ海諸国とのつながりが深く、カリブ共同体(CARICOM)の事務局もあります。インド系とアフリカ系を中心に、先住民、ヨーロッパ系、ムスリム、中国系など多様な人種・民族構成になっており、それが元で特に5年に1度の大統領選挙の際には激しい対立が度々起こりました。

このような状況を踏まえ、国連開発計画(UNDP)ガイアナ事務所では、貧困削減とミレニアム開発目標(MDGs)の達成、民主的ガバナンスの促進および紛争の予防、そして環境・エネルギーと防災を3本の柱として、ガイアナの開発を支援しています。また、当事務所は「ガイアナの盾」と呼ばれる、ギアナ3国(ガイアナ、スリナム、仏領ギアナ)、ブラジル、ベネズエラ、およびコロンビアにまたがる地域に広がる森林の生態系を保全する地域プロジェクトの事務局も務めています。

貧困削減とMDGs達成の分野では、これまで継続的に国別MDG報告書の作成を支援してきました。また、特に2015年までに達成が困難だと思われる、妊産婦の健康改善に関する目標(MDG 5)に関しては、達成に向けた行動計画の策定を支援しました。また、特に先住民の貧困率が高いので、先住民コミュニティの持続的開発を支援するプロジェクトも実施しています。

近年ガイアナは、潤沢な天然資源の開発により順調な経済成長を実現してきましたが、同時にこれまで手付かずに保たれてきた自然環境の破壊が問題となってきました。そこでUNDPは、昨年新設された天然資源・環境省の5か年計画策定を支援し、また同省の大臣など政府高官に対し、環境分野で興味深い取り組みを行っているルワンダへのスタディー・ツアーを提案し、UNDPルワンダ事務所の協力を得て実現しました。エネルギー分野では、送電網から外れた内陸部のエネルギー需要の調査を支援し、現地の気候や地形、投入可能な予算などに応じて、小規模水力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用した開発計画を提案しました。また、防災の分野では、特に2005年の大洪水以降、UNDPは防災に関わる法や政策の整備、防災計画の策定などを支援してきました。さらに今年はキューバで行われている地域レベルでの防災の取り組みを学ぶ機会を提供し、毎年洪水に見舞われる地域でパイロット(試験)プロジェクトを実施しています。

ガイアナでは多様な人種・民族構成が様々な対立の元になっており、これまで特に5年に1度の大統領選挙の際にこの対立が鮮明になってきました。UNDPは、選挙の年に対立が起こらぬようその円滑な実施を支援するとともに、近年は、「選挙プロセス支援」という考え方に立って、選挙の年だけでなく、その前後にも継続して異なるグループの人々がひとつの場所に集い、対話する場を提供してきました。また、特に国の将来を担う若者たちに注目して、彼らにリーダーシップや対話、交渉の手法、対立を解決あるいは仲裁する技術を習得する機会を提供しています。

ガイアナは日本から「遠くて遠い国」ではありますが、国際協力機構(JICA)の専門家が常駐し、日本のカリブ諸国への協力に日々奮闘されています。また、当事務所には日本政府の資金拠出による日本人の国連ボランティア(UNV)調整官がおり、JICAと協同してボランティアの活動を紹介するカレンダーを作ったり、首都の市民に向けて環境問題への関心を喚起するキャンペーンを行ったりしながら、日本と国連のパートナーシップ強化に努めてきました。

私の事務所での仕事は、これらの事業が円滑に実施されるように政府やその他のパートナーと交渉したり、事業担当スタッフと今後の方針を話し合ったり、問題が起こればそれに対処したり、といったことの他、人事や調達、財務、総務などの管理部門の責任者として日々の事務所運営を担っています。年々予算が削減される中、より少ない人員と資金でより多くの業務を遂行していかなくてはならないので、そのような状況でもスタッフがやりがいを持って生き生きと働けるよう、知恵を絞る毎日です。また、仕事にはきりがありませんが、家族と過ごす時間はとても大切なので、仕事の優先順位を明確にしてワークライフバランスの実現に努めています。今、社会人として折り返し地点を迎えていますが、今後も初心を忘れず、また応援してくれる家族や友人など、周囲の人々への感謝の気持ちを持って開発協力の仕事を続けていきたいと思います。

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三上知佐(みかみ・ちさ)
大阪府出身。東京大学教養学部卒。シティバンク勤務を経て、コロンビア大学にて国際関係論修士号取得。UNDPキューバ事務所、東京事務所(現・駐日代表事務所)、グアテマラ事務所を経て、2011年2月より現職。

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