TICADの成功事例

タンザニア農家による緑化のための風力利用の取り組み

タンザニアのビクトリア湖の南岸地域では、環境に優しい風力と太陽エネルギーを活用して、作物への散水を行うポンプの動力源を生み出そうという農家による取り組みが行われています。

この地域の農家は、ネパール出身の国連ボランティア(UNV)、プラシャナ・シュレスタ(Prashanna Shrestha)さんの協力を得て、灌漑に必要な水の汲み上げに自然エネルギーを利用しています。プラシャナさんは、4つの地区において、ディーゼル燃料のかわり太陽・風力エネルギーを利用する灌漑プロジェクト8件を計画しました。灌漑用ポンプで取水されたビクトリア湖の水は、パイプで中央貯水槽へと集められた後、複数の貯水タンクへと送り込まれます。水はそこから、勾配のつけられた用水路をつたい、農家の畑へと流れるという仕組みです。

「このポンプの導入によって農産物の品質が向上します。地域によっては、これまでに無い種類の作物の栽培も可能になるでしょう。また、これまでは部分的にしか耕されていなかった畑にも、全体の耕作に充分な水が供給されるようになります」とプラシャナさんは話しています。

プラシャナさんによると、同プロジェクトの恩恵を受ける農家の数は400人にのぼります。試験的に設置された風力ポンプにより、すでに貯水タンクへの水の輸送が開始されました。最終地点である新しい用水路の建設も開始されました。

プラシャナさんは2001年7月にTICAD国連ボランティアとしての活動をタンザニアで始めました。アフリカに赴任する前はネパールの国立灌漑局で灌漑専門家として勤務していたプラシャナさんは、以前にもUNVとしてカンボジアに駐在し、UNDPと国際労働機関(ILO)の共同灌漑プロジェクトに携わった経験を有しています。現在では、太陽・風力エネルギーを利用した灌漑プロジェクトを構築するためのモニタリング、管理および支援業務の責任者として活動しています。

同プロジェクトでは、クリーンで再生可能なエネルギー源だけでなく、研修を通じて、プラシャナさんや他の専門家がこの地を去った後も地元農家が中心となって長期的にポンプを維持管理するための技術も提供しています。プラシャナさんと4人の地域コーディネーターは、灌漑システムとポンプを滞りなく稼動させるために必要な技術を伝えるために、多くの地元組織と協力しています。プラシャナさんによると、研修プログラムは非常に順調に進んでおり、農家の人々も徐々にこの技術に馴染みつつあります。

UNDPのプロジェクトでUNVの主任を務めるネヒミア・ムルスリ(Nehemiah Murusuri)氏は、次のように語っています。「プラシャナさんは次の2つの点で素晴らしい貢献をしてくれました。ひとつは、農家が低コストの灌漑システムを設計するための支援です。灌漑プロジェクトの大半には高い費用がかかるため、貧しい人々には手が届かないのが現状なのです。もうひとつは、農業従事者と灌漑技術者の能力構築です。再生可能なエネルギー技術を活用する灌漑システムは、農家から非常な歓迎をもって迎えられています。この技術が受け入れられているのは、システムの稼動や維持管理にほとんど費用がかからないためです。また環境負荷が少ないのも魅力です。」

同事業は、各戸への水供給を支援することにもつながります。これは、安全な飲み水を継続的に確保できない人々の割合を2015年までに半減することを目指した7番目のミレニアム開発目標(MDGs)の達成にも寄与するものです。

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