TICADの成功事例

ケニアの将来に融資する

わずかな初期融資が、ケニアの小規模ビジネスの成長に大いに役立っています。この資金提供は、多くの起業家の暮らしに変化をもたらすことでしょう。UNVの一員であるヌルル・フダ・チョウドリーさんの活躍によって、これまでに3,000人を超えるケニアの人々が事業を開始しました。

沿岸都市モンバサでは、2人の女性が融資を受け、新鮮な果物や野菜の販売所を立ち上げました。この事業を視察したヌルルさんは大変感銘を受け、次のように述べています。「事業を始める前、この女性たちは性産業に従事していました。しかし今は仕事に誇りを持ち、過去を振り返ることはありません。」

母国バングラデシュで24年間の職務経験をもつヌルルさんは、2001年にナイロビへ移り住み、アフリカ開発会議(TICAD)イニシアチブの一環として、国連ボランティア(UNV)のマイクロファイナンス(小規模融資・信用貸付け)専門家としての活動を開始しました。

ヌルルさんは、100米ドルの提供を通じて貧しい人々の起業を支援する、米国生まれの「トリクル・アップ」活動のケニア版として、このプログラムを同国に普及させるうえで、重要な役割を果たしました。ヌルルさんが最初に行った活動の1つに、マイクロクレジット(小口貸付)計画を実施するためのマニュアル作成がありました。120ページに及ぶそのマニュアルには、起業を成功させるのに必要な、すべての要素が盛り込まれています。さらにヌルルさんは、進捗状況を把握して経営指導を行えるよう、各事業の現場にも足を運びました。

ヌルルさんはまた、ケニアの中でも辺境に所在する57の村落銀行とも広範囲にわたって協力しています。銀行業務の改善を図るため、モニタリングや検査、各行の金融活動の監査に関する統一された簡略な評価プロセスを確立しました。村落銀行は、農村地域社会において通常なら融資対象から外れてしまう人々にも貸付を提供するため、貴重な存在であるとヌルルさんは言います。さらに、ヌルルさんは、貸付担当者と銀行支店長に対し、評価・モニタリング・監査技術の研修も行っています。これまでに貸付担当者など100人の銀行員が研修に参加しました。

その他、ヌルルさんも関わったケニアでの取り組みには、国連開発計画(UNDP)と国連資本開発基金(UNCDF)による「マイクロスタート」の名で知られるプロジェクトがあります。この試験的プロジェクトでは、5つの小口貸付組織(MFIs)が資金提供を受け、農村地域に住む人々を対象とした貸付業務の改善に努めました。この5組織のうち、2つが女性のための組織、1つがジェンダー問題に特化した組織、そして残りの2つが起業と経営管理を扱う組織でした。

ヌルルさんは「マイクロスタート」プロジェクトにおいて、各機関に提供された資金が間違いなく適切に活用されるよう、5つの小口金融機関の活動について、モニター、追跡、そして監督業務を実施しました。この「マイクロスタート」の試験的プロジェクトの成功を受け、2004年を目処にケニア全土へとプロジェクトを拡大する計画が進められています。

ヌルルさんは次のように語っています。「ケニアの貧困層を対象とした技術支援やコンサルタント業務に携わることができたことを誇りに思います。私はバングラデシュでは良い仕事に就いていた時から、自分の経験を人々のために活かしたい、開発途上国の開発プロセスに貢献したい、と思っていました。ボランティアとして活動することで最大の支援ができる、そういう思いから、TICAD国連ボランティアになろうと決めたのです。」

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