TICADの成功事例

カメルーンのIT化に取り組む

カメルーン北西部の主要都市を結ぶ未舗装の道が、ここクンボの町にも通っています。急な坂道や深い谷を通る迂回路が入り組む景観は、息をのむばかりの美しさで人を魅了する一方、このような地形は、この地を開発しようとする者にとっては大きな障害となっています。カメルーンのほとんどの農村地域社会と同様、約10万のクンボの住民は、少しでも生活条件を改善しようと数世紀にわたって荒れた傾斜地を開拓し、辛うじて生活をつないできました。しかし21世紀は、新しい生活に欠かすことのできない技術進歩をこの地にももたらしました。今日では、様々な社会階層の人々がインターネット・ショップに集っています。

情報技術へのアクセスによる効果は、特にクンボの教育現場で容易に目にすることができます。クンボの町は以前より、初頭・中等・高等学校、さらに専門学校、職業訓練学校が集中する、カメルーンの教育の中心地として知られていました。16万人の国民のうち、約40%が1日1ドル以下で生活するカメルーンでは、ほとんどの国民にとってパーソナル・コンピュータの所有など遠い夢のような話です。このため、国連開発計画(UNDP)のTICAD-ITプロジェクトを通じてコンピュータの購入を助成する、安価なコンピュータ普及方式が創設されました。これまでにこの方式を利用して175台を超えるコンピュータが購入されました。さらにUNDPは、コミュニティ・マルチメディア・センターを開設し、1時間当たり1ドルというカメルーンの標準的インターネット・アクセス料金を0.5ドル以下にまで引き下げ、インターネットの利用率を拡大させました。

情報通信技術(ICT)利用者の輪というコンセプトの普及は教育現場に限られたものではありません。生徒や学生以外のICT利用者グループで最も活発な活動をしているのが、イスラム教徒の女性たちです。この活動は彼女たちに新たな自信をもたらしましたが、これもITを通じた経済的エンパワーメントの成果といえます。

地域社会のIT化によって大きな恩恵を得たもう一つの分野が医療分野です。クンボには、高い評価を得ている2つのミッション系医療機関がありますが、病院経営にとって効率的な通信システムの整備は最優先課題です。カメルーン各地からやってくる患者にとっても、病院内におけるインターネットへのアクセス実現により「家族や友人といつでも連絡がとれるとわかっているので、以前に比べて安心して心静かに入院生活を送ることができます」と看護婦長は述べています。

クンボの非政府組織(NGOs)であるNAVTI財団は、インターネットを駆使し、カメルーンの地域社会の開発プロジェクトに欧州や日本の人材を活用しています。

様々な分野ごとの効果に加え、ITはカメルーンの地域社会全体に好影響を与えています。たとえば、インターネットは、コミュニティ・マルチメディア・センターで定期的に行われる地域社会の会合に人々が集まるきっかけともなっています。こういった会合や異なる分野の関係者と意見を交換することは新しい住民活動であり、開発イニシアチブのための関係者間の調整を円滑化することができます。このように、インターネットは相乗効果を生み出しています。

インターネットによってクンボで実現された主要な改革の一つが、地方行政における電子ガバナンス・システムの導入です。米国、ヨーロッパ、南アフリカなど外国に住むクンボ市民にウェブサイトを通じたコミュニケーションの場を提供することによって「数千マイルも離れた場所から自国の活動への参加が可能になりました」とクンボ市長は述べています。市議会は最近、251区画の新しい地所の情報をインターネット上で公開し、これによって遠く離れた地で暮らす多くのカメルーン出身者が母国の土地を購入することが可能となりました。

これが、住民がUNDPの支援を受けて開発のためのサービスへの情報通信技術の活用に取り組む、アフリカの小さな町クンボの事例です。この事例は、ITは適切な時に適切な方法で活用することによって、開発にとって重要な触媒の役割を果たすことができるということを示しています。

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