TICAD IV閉幕:アフリカの「成長の世紀」のための枠組みが決定される

2008年5月30日 横浜(日本)

サミット(先進国首脳会議)級の国際会議となった第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)は、アフリカ各国から40カ国の首脳を含む51カ国の代表が集い、議長国日本の福田赳夫総理大臣と共に、アフリカの「成長の世紀」の青写真を創出することを目的として、28日から30日の3日間の日程で開催されました。

福田総理大臣は開会式の演説において、「アフリカはこの先、世界の成長にとって力強いエンジンとなるでありましょう。」と語り、2015年までのミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた取り組みを加速するべく、日本の政府開発援助(ODA)を漸次増加させ、今後5年間で2倍にする約束を含めたアフリカ開発のためのイニシアティブ・パッケージを発表しました。

福田総理は、「アフリカの成長が勢いを増していくため何より重要なのは、インフラの充実であります。」と語り、さらに「特に交通インフラを整備することが民間投資を呼び込むには非常に大切だということを、日本やアジアの経験は教えてくれております。」と続けました。福田総理は、アフリカの諸国のインフラおよび農業といったセクター開発支援のために最大40億ドルの円借款と、国際協力開発銀行(JBIC)の「アフリカ投資倍増支援基金」の新設を含む25億ドル規模の対アフリカ金融支援を提供することも約束しました。

TICAD IVは、今後のアフリカ開発の方針を示す「横浜宣言」、測定可能な目標を伴う行動志向のイニシアティブ遂行のためのロードマップを提示する「TICAD IV横浜行動計画」および「横浜フォローアップ・メカニズム」を採択しました。後者の2文書は、きわめて革新的であると歓迎されました。

「元気なアフリカを目指して:希望と機会の大陸」を基本メッセージに掲げたTICAD IVは、1)成長の加速化、2)平和の定着とグッドガバナンス、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成を含む「人間の安全保障」の確立、3)環境・気候変動問題への対処、という3つの分野に重点を置きました。

ケマル・デルビシュ国連開発計画(UNDP)総裁は、「TICAD IVのテーマは、多くのアフリカの国々が達成した目覚しい開発成果を非常によく表現しています。」と述べ、さらに「アフリカの経済的発展について見れば、サハラ以南のアフリカ諸国の平均経済成長率は2004年以降5%以上、2007年には6%に達しています。これは世界平均より1%ポイント高い数字です。」と続けました。

アーシャ=ローズ・ミギロ国連副事務総長は、「アフリカ諸国政府と開発パートナーとの協調イニシアティブで、より良い国際社会実現に向けた目標を達成することができるのです。」と述べました。ミギロ国連副事務総長は、世界的に高騰し続けている食糧価格が及ぼす影響を緩和するために、国際社会およびアフリカ諸国政府がアフリカの農業セクターへ提供する支援を大陸全体で強化させ、「横浜宣言」およびミレニアム開発目標(MDGs)アフリカ運営グループの勧告を早急に実施するよう求めました。

ロバート・ゼーリック世界銀行総裁は、「世界銀行グループのアフリカでの目標は単純明快です。今後約15年の間に、今の世代、つまりアフリカ各国の現指導者の政権期間において、過去数年間で中国、インドが成し遂げたように、アフリカがグローバルな成長の一極を形成し、他の国々もまた、先進国を補完するような成長の補完的な一極となることを、私は確信しています。」と述べました。

アフリカ連合(AU)議長でもあるジャカヤ・ムリショ・キクウェテ タンザニア連合共和国大統領は、TICADプロセスを通じ、日本がアフリカへの民間セクターの投資促進に向けた取り組みの一層の拡充を望むと述べました。さらにキクウェテ タンザニア大統領は、アフリカは地球温暖化への関与の度合いが最も低いにもかかわらず、正当な負担を超える義務を課されていると指摘しました。キクウェテ大統領は、「アフリカ諸国は、ポスト京都議定書の現実的メカニズムとして、広く国際社会のコンセンサスを確立させるべく日本が発揮している指導力に敬意を表し、さらに100億米ドル規模の「クールアース・パートナーシップ」(気候変動対策における開発途上国支援のための資金メカニズム)の構築にむけた努力を讃えます。」と付け加え、「クールアース・パートナーシップ」の一定額をアフリカ向け資金に振り向けるよう日本に求めました。

福田総理大臣は、1993年に創設されて以来のTICADプロセスの指針であるアフリカの「オーナーシップ(自助努力)」と、アフリカと国際社会の「パートナーシップ(協調)」を強調しました。福田総理は、日本が食糧価格高騰の影響を緩和するため新しく打ち出した1億米ドル相当の緊急食糧支援パッケージの「相当部分」をアフリカに向けると述べ、現状1,400万トンの米の生産高を10年間で倍増させ、アフリカの「緑の革命」に拍車をかけることを呼びかけました。

日本政府は、HIV/エイズ、結核、マラリアとの闘いを支援するため、支援総額の6割がサハラ以南のアフリカ諸国に向けられている世界基金(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)に対し、当面5.6億ドルを拠出する予定です。またこの地域で保健医療の人材不足に対する対策として、今後5年間で10万人に訓練を提供します。

TICAD IVには、国際機関および地域機関、民間セクター、市民社会組織からの74名の指導者や代表を含む3,000名以上が参加し、その議論に貢献しました。またG8諸国を含む先進国やアジア諸国等パートナー国34カ国からも、閣僚級の参加者を含むハイレベルな代表が参加しました。

日本は、今年7月7日から9日に開催される北海道洞爺湖サミットにおいて福田総理大臣が議長を務め、TICAD IVの成果を活かし、世界の経済大国間の会議であるサミットの場に、アフリカの優先課題を提示する予定です。

日本政府は、TICAD IVにおいて「野口英世アフリカ賞」の第1回授賞式を執り行いました。医学研究部門の受賞者は、ブライアン・グリーンウッド博士、医療活動部門の受賞者はミリアム・ウェレ博士でした。各部門の受賞者には、1億円(約100万米ドル)が授与されました。同賞は、ガーナで黄熱病研究を続け80数年前に病死した著名な日本人研究者である野口英世博士の功績を讃えて、2006年に創設されました。

アフリカの指導者と開発パートナー間の、首脳レベルの政治対話の場として、1993年に東京でスタートしたTICADプロセスは、その後1998年のTICAD II開催、2003年のTICAD III開催へとつなげられ、アフリカの開発イニシアティブを促進する重要な国際的な枠組みへと進化を遂げてきました。

以上
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